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2004/01/12

(国通)フォートレス・ヨーロッパ リプレイ

今回は国際通信社のコマンド誌付録のフォートレスヨーロッパを少し前のリプレイになるが、記録が残っていたので掲載する。なおこのプレイは初プレイであり、プレイヤーはルールを先読みした程度である。

 さて、前回の対戦で異常なまでに「フォートレス・ヨーロッパ」に興味を示していたK氏だが、実は筆者も大いに興味があった。その理由は二次大戦の西部戦線をキャンペーンでプレイできるゲームは我々の所持しているゲームの中では本作の他にGDW「ラインへの道」位しか知らないからだ(筆者注。当時の話)。
 そういう意味でも本作は重要な位置を占めるゲームであるが、何故かプレイされなかったのは東部戦線に比べ期間の短さに比べてエピソードが多く特別ルールの山だと言う事であろうか?
 事実、本作の原版の一つであるAH「ヨーロッパ要塞」はそのラインナップ中最高の難易度の高さを誇るハードゲームであり、古参兵といえどもなかなか手を出しづらいゲームの一つであった。
 しかし、原作者であり、リメイク版の作者でもあるジョン・エドワーズ氏の努力もあり40ページ近くあったルールブックは約10ページまで圧縮され、国際通信社のグラフィックの手を経て現代的に華麗に生まれ変わった。
 西部戦線に飽く事もない興味を抱く我々2人は本作をプレイする事にした。いつもの流儀であればダイスを振って受け持つ陣営を決定するが、今回は勝手にK氏が、
「俺はやっぱりどっちかと言えば連合軍やろう。」
などという訳のわからない事を言い出したので、恐れをなした筆者は老人に席を譲るように連合軍のポストを明け渡した。

 さて、このゲームは連合軍の上陸作戦からゲームが始まるわけだが、基本的に港湾都市を占領する事で補給容量を増やし、上陸する大陸派遣軍を養っていくという形をとっている。
 上陸作戦は天候に左右されるが任意2回だけ行われ、上陸地点も任意に決定できる。従って史実通りにノルマンディに上陸しても良いし、ドイツ軍が予想したカレー海岸でも良い、ウェリントン公のようにオランダに上陸しても良いし、アンヴィル作戦を主攻勢にして南仏から上陸しても良い。意表をついてビスケイ湾やブルターニュ半島に上陸しても良いなどと自由度が高い。
 西部戦線と言えば空軍の扱いが東部戦線とは決定的に違う要素であるが、アブストラクトな処理ではあるが、地上支援、鉄道破壊、交通妨害、Uボート/V1ロケット基地攻撃などの任務を割り当てられ、それぞれ戦闘や移動に大きな影響を与えてくれる。
 地上部隊は司令部によって統率されており、ありがちなルールであるが指揮範囲以内にいれば補給下とみなされるが、大きく外れると孤立とみなされてペナルティを被る。また司令部は地上支援の際の基点ともなり、その運用には細心の注意が要求される。またおなじみの戦車部隊は2次移動や攻撃が出来るようになっており、基本がマストアタックであり、地形によってスタック出来る部隊数の増減やZOCの有無があるなど古典的ではあるが、今までのルールがほぼ満載といえる内容である。
 まあ、言ってみれば昔なりに凝っているという感じで、ゲーム自体はキャンペーン級であるので、戦略眼が要求されるし、スタックの増減やマストアタック、犠牲比率など、テクニカルな要素も要求されるという意味では40ページが10ページにリファインされたとはいえ、プレイアビリティは高いがプレイには頭を使う。

プレイスタート 
 第1ターンであるが、史実以上に部隊を貼り付けたドイツ西方総軍はてっきり連合軍はフランス北岸、ブルターニュ半島、意表をついてビスケイ湾から侵攻してくるものとして配備をかためていた。
 特に隠匿配置できる装甲軍団と歩兵軍団はブルターニュ半島とビスケイ湾の中間地点に配置し、いつ何時でも脳天気に上陸してきた連合軍に鉄槌を下すべく配置されていたのであった。
 もちろんオランダ海岸からカレー海岸、ノルマンディ地方に張付け師団、歩兵師団の類を配置していたためにまさしく西方防壁の名に等しいまでの鉄壁度を誇っていたつもりだった。
 仮に連合軍がノルマンディに無事に上陸できようとも海岸部の歩兵部隊と遊んでいる間に強力な装甲軍団が駆けつけて一掃してくれるはずである。
 そのためにどの地方もまんべんなく兵力をばらまかずにブルターニュ半島の一角に丁度上陸してくださいと言わんばかりの死角を残しておいたのである。
 K氏がその罠に気付くことなくあるいは敢えて突っ込んでくれようものなら数ターンのうちに装甲軍団が上陸部隊を海に蹴落としてくれるだろう。仮にフェイントでビスケイ湾に上陸しようものならさらに強力な歩兵師団が配置され、同じように装甲軍団がすぐさま駆けつけてくれるはずだった。
 しかし、気になるのは観戦武官と称してプレイに参加するT氏である。相変わらずリプレイ用の記録もなにもしないのだが、ろくでもない助言のみをK氏に与えていた。

「K氏、この状況で戦争をはよ終わらすのはここ、オランダに上陸やで。ここならフランスのドイツ軍を全軍補給切れに出来るで。」
 「補給切れ」の言葉に補給切れが好きなK氏の眉がぴくっと動いたが、平静を保っていた。いや保とうとしていた。
「K氏、意表をつくのはここ、南フランスに上陸やで、ここならドイツ軍の妨害にあう事もなく上陸できるで。」
 「意表をつく」の言葉に兵は奇道なりのK氏の鼻がぴくっと動いたが、平静を保っていた。いや保とうとしていた。
 助言はまだ続く。ドイツ軍プレーヤーの筆者にも向けられた。
「あー、TK氏(筆者)。海岸に兵力バラマキすぎやで、反撃戦力が全然あらへんがな。」
「いやー、T氏。実は装甲戦力と有力な歩兵戦力がとある箇所に隠匿配置されてんのや。」
「内陸で戦うなんて君はルントシュテットか?」

 ルントシュテットかロンメルかこの際どうでも良い。要はK氏は適当に突っ込んでくれてオマハビーチのようにプライベートライアンのように30分で勝負を決めてやる。

 D-DAY初日、連合軍はあきらかに手を抜いているんじゃあないかという位の適当な戦力で南フランスのマルセイユ近郊に上陸を開始した。戦略的奇襲である。お約束の空軍や艦砲射撃はあったが、名物の空挺部隊の落下傘降下は見られなかった。何ともショボイ史上最大の作戦である。これでは後世の映画化は期待できない。
 対するドイツ軍はそんな田舎に上陸するような物好きはいないだろうと言う事で、かき集めて2コ軍程度の兵力がいる程度だった。もちろんよくかき集めてみると1コ軍にも満たないのだが、編成上は2コ軍である。当然海に蹴落とす役目の装甲軍団たちは遙か彼方の北フランスである。とうてい間に合わない。

「彼らは来た。」。
筆者は名著パウルカレルの「彼らは来た」をもじって驚嘆の意を表したが、T氏は筆者の主力が北部にいるのを察して「彼らは北」に聞こえたのか吹き出していた。

 在場の張り付け師団は勇戦敢闘したが、とりあえず艦砲射撃と空軍の直接支援の前になす術もなく殲滅されてしまった。D-DAY1日目からマルセイユ陥落である。かの地は南仏最大の補給容量が得られ、ここを起点にされると少々やっかいである。
 補給容量を決める方法は占領後にダイスを振ってその値によって0から倍々ゲームのように増える事もあり、結構振り幅が大きい。
 6の目が出るとドイツ軍の破壊工作が功を奏し、撤退前に完全に施設設備を破壊しつくしたものとして補給容量が最悪の「0」という結果になるが、それ以外はそこそこ貰えるようになっている。
 しかし忘れてはならないのはこのダイスを振るのが「K氏」という点である。
 ここ数年の記録をさかのぼれば数々のクリティカルなダイスの目を出し続け、己を苦しませ続けてきたというダイス・マゾヒスト。国通「信玄最後の戦い」でも序盤早々から自軍を崩壊させるような状況変化のサイ振りをした事は記憶に新しいし、ツクダの一連の銀英伝のゲームでもそのクリティカルなダイス修正のためにヤンやラインハルトを討ち取られてしまうと言う失態を演じている。

「まあ、俺が思うにお前は6出すよ。」
筆者の言葉にも動ぜず相変わらずK氏は沈黙を守っている。
お気に入りのRPGダイスを握りしめて気合いを入れて第1投。

「6!!」
「何やねんそれ!!」K氏の悲痛な叫びが部屋にこだまする。
 マルセイユは早期に占領に成功すれこそしたが、ドイツ軍によってズタズタに破壊しつくされたあとだった。廃墟と化した町並みからフランス国歌「ラ・マルセイユーズ」がむなしく響く。町に殺到した連合軍将兵にはひと切れのパンすらもあたらなかった。
 幸い現地のドイツ軍は弱体であり、この窮乏を付く兵力は皆無であった。史実的だと言えば史実的だがせめて第9装甲師団や第2SS装甲師団のように少しだけでも南仏に装甲兵力を割いておくべきだった。
 調子に乗った連合軍は陸路から補給容量欲しさに港湾都市ツーロンをおそう。見るからに目的が明らかな美しくもない攻撃に天上の毘沙門天は怒りの鉄槌を下した。
「補給容量のチェック!だー!6!!!何やねんそれ」
またしても6である。
「天罰よ」
「日頃の行いが悪いからだ」
「RPGダイスなんか使うからだ」
「史実に反する事をするからだ。」
とかさんざん嫌味を言われ凹みまくっているK氏は、その避難の矛先を6出せば補給容量が得られないというルールにイチャモンをつけてきた。

 とか何とか言いつつ橋頭堡は拡大しつつある。当然である。対するドイツ軍と言えば北フランスからの行軍中であるからだ。しかしここで重大な問題が発生した。
 ドイツ軍の司令部が足りなくなるのだ。そのわけは指揮範囲と言うことをほとんどかえりみず、張り付け部隊をバラ撒いた結果、全ての部隊が指揮範囲の最大範囲内に何とか収まっており、装甲師団を転進させると他の動かしていない部隊に補給を与え続けるためには司令部を動かせることは出来ず、かといって全ての部隊が持ち場を離れて良いかと言えばそうでない。したがって司令部は身動きできなくなってしまい、その装甲部隊に補給を与えられなくなるのだ。
 つまり、南仏に援軍を送るためには2次上陸の可能性が高い北仏の防衛を一部諦めて、かなりの規模で再配置を行わねばならないのだ。それか南仏の戦線を大きく後退させて南と北の司令部間の距離を短くし、援軍部隊を収容するかの2つに1つである。

 結局北の再配置を行い、大規模な配置変更が行われた。今までなら伝令が走って連絡が出来るほど北の司令部間の距離は短かく前線との距離も短かったが、今や司令部後退か?と思わせるほど大胆に移動である。
 この配置劇のお陰で連合軍はドイツ軍の反撃を1ターン遅らせることに成功し、橋頭堡のさらなる拡大と内陸部の侵攻を果たしたのであった。

 司令部も転進中のドイツ軍はやめときゃ良いのに、連合軍プレーヤーに助言を次々としてしまった。
「お前な、ドイツ軍がスイスイ道路移動できるのは西部戦線じゃあないぞ。パルチザンでも使わんかい。」
「お前な、空軍は全部地上支援なんて湾岸戦争じゃあないんだから、交通妨害とかUボート基地攻撃とか色々任務があるでしょうに。それぞれ1コ1コに意味があるんやで」
「お前な、コマンドとか空挺部隊があるでしょうに。」
K氏は「そうやね。」の一言を最後に各ルールを次々と活用し出すのであった。

 突如として連合軍ユニットが港湾都市ニースに上陸!!
 「き、奇襲だ!!」
 戦況に全く意味のないこの上陸作戦は規模だけがやけに小さく、全く意図が不明である。
「何や、お前こんなところで第2次上陸をするんか。もったいなすぎるぞ。」
 筆者はあまりに意味のないこの上陸の意図をK氏に問いただした。
「いやー2次上陸じゃあないんや。コマンドの強襲上陸や。ルールにも書いてあるぞ。」
迂闊である。ルールを活用せいと言っていた手前、こんな姑息な手段を用いてくるとは。強襲上陸という事は単にニースの占領を目的としていると言うことか。
「いやーニースの補給容量が欲しいんや。」
アッケラカンと語るK氏。
 餓鬼道である。連合軍の欲しい物があるからと言うだけで戦火に巻き込まれたニース市民には同情に堪えない。
 しかし、ドイツ軍がいない無防備都市とは言えども補給容量獲得チェックでは、6を出せばインフラ設備が破壊し尽くされたと言うことで補給容量は獲得できない。
 そんな犬畜生並みの連合軍は補給容量獲得チェックのダイスを振る。
「6!!!」
「なんやねんそれー」
奇襲上陸はニースの占領しか連合軍にはもたらさず、全く意味のない作戦となってしまった。

 司令部指揮範囲外で補給切れとなったドイツ装甲軍団は、後から追求してくる司令部を一日千秋の思いで待ち続けることとなった。一部の部隊は孤立状態を避けるため一度来た道を引き返し、停滞することとなった。ようやくノソノソとやってきた司令部の到着と共に装甲軍団は再度始動し始めた。遅れた分はその攻撃力で取り返せることだろう。
 しかし、先ほど色々利用できるルールがあることを告げたせいかパルチザンマーカーがマップ上に置かれている。さらに航空支援の項目には機銃掃射や鉄道攻撃などのパラメータに空軍ユニットが配置されている。
 連合軍の航空妨害のためドイツ軍の援軍はさらに1ターン遅れてしまう羽目に陥るのであった。司令部の手当さえキチンとしておけば、このターンには到着し、手詰まり観のある連合軍の橋頭堡拡大を阻止できることであろう。

 先行して到着した装甲軍団は隘路部に存在する英第79機甲師団を攻撃し、これを壊滅させ凱歌を上げた。後続する1コ軍団がいればさらに戦線を突破する予定であったが、兵力不足のため見送られた。装甲軍団の両翼は弱体な歩兵師団である。マストアタックではヤバイ配置である。
 次のターンドイツ軍戦線の弱点を嗅ぎつけた連合軍は両翼の歩兵師団を先に撃滅させて置いてから航空支援を多量に投入し低比率で装甲軍団を攻撃、後退する場所の無くなった装甲軍団は壊滅となってしまった。ファーレーズである。
 マストアタックであれば仕方ないとはいえ、虎の子装甲軍団が秒殺されてしまったのには少々拍子抜けしたが家に帰って確認すると敵のZOCの及ぶヘックスには戦闘後前進できないとあり、本当は壊滅しなくても良かった事は悔やまれる。
 それにしても航空支援のために戦闘結果が読めなくなっている。連合軍の前では絶対な防衛ラインは存在しない。さて、どうすべきか前で戦うべきか後ろに引くかと言うところで時間も押し迫ったのでお開きとなった。

 プレイ後懇談の結果、判明したその後に実行するはずだった秘密作戦を紹介すると。

ドイツ軍のマルベリー破壊大作戦
 補給容量に苦しむ連合軍をさらに苦しませるために編み出された作戦。相変わらず前線に全力を投入する連合軍の特性を利用し、マルベリーのあるマルセイユに空挺部隊を降らせ、地上から装甲部隊が突撃するというマーケットガーデン作戦のような作戦。

連合軍の補給容量獲得大作戦
 補給容量の貧困にあえぐ連合軍を救出するために、コマンドの強襲上陸や空挺降下を最大限に利用し、ニースの時のように補給容量の獲得のみを目的としたコマンド-作戦。襲撃箇所は防備の薄いマップ端のボルドーとのこと。
 
 両作戦で狂っているのは立案者が成功を信じて疑わないが、その作戦結果をダイスの目に賭けると言う所であり、それだけでもその正否・狂気度がわかりそうな物である。

 以上が今回のフォートレスヨーロッパであるが、プレイは吹き出さんばかりの展開となったが、噂に違わないハードな名ゲームである。確かに細々としたルールの存在があるが、西部戦線キャンペーンという点では良作といえるだろう。キャンペーン級とは言え、おいそれと簡単にプレイできないハードな仕上がりである。特にマストアタック、地形によってスタック出来る数が変わる、航空支援など、気の抜けない側面があり、それは補給容量に縛られる連合軍も同じ事だろう。
 2人して得た結論はもっと慣れればスムーズであろうし、面白い。繰り返しプレイしたいとのことであった。
また、作戦立案の楽しさも上記を見ていただければおわかりになると思う。
 まさしく看板どおりに「あなたのノルマンディはどこですか?」である。

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