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2005/11/13

ダークディッセンバー(SA)プレイ

 前回、ゼーロフ&キュストリン1945をリプレイを上げた時、最近の他のゲームに関してはプレイをしていなかったので言及を避けていたが、内心かなりクォリティが高いことを感じていた。デザイナーの山崎氏の出版スタイルは本誌をオリジナルデザイン、別冊を再販ものという位置づけで出版している。別冊は第1号は過去にホビージャパンで出版されていたジョン・ヒルのスターリングラード攻略戦で、第2号はダニー・パーカーの忘れられたバルジゲーム「ダーク・ディッセンバー」だ。
 ダニー・パーカーといえばミスターバルジと言おうかバルジの戦いに執念を燃やしているデザイナーで、バルジの決定版といわれた「ラストギャンブル(HJ)」のデザイナーでもある。ラストギャンブルは最終的に同人出版という形で日本で限定ながら再販されたが、なりが大きいので気軽にプレイができない。それに対してダークディッセンバーはフルマップ1枚、ユニット480個というちょっとコマ数の多いゲームで、ルールも複雑すぎることはない。
 そういうツボをついた作品をセレクトしたというのもあるが、最近出版ラッシュで食傷気味になりかねないバルジゲームでこのゲームはどのような位置にあるのだろうか調べたくなった。かねてより士気の上がりつつあるTS氏がプレイしたいということもあり、急遽プレイすることにした。

  さて、ゲームはTS氏と平日の昼下がりに行われた。セットアップはドイツ軍はフリー連合軍はヒストリカルとなっている。
 担当はTS氏宅に行った時に、既にセットアップしてあって座る側が連合軍だったので、必然的にTS氏がドイツ軍、筆者が連合軍をプレイすることになった。
 システムはドイツ軍・連合軍のプレーヤーターンがあり、詳細は次のように進む。

  • 両軍補給判定フェイズ
  • 補充フェイズ
  • 移動フェイズ
  • 戦闘フェイズ
  • 建設/破壊フェイズ

 一見するとよくある作戦級ゲームで使われていると言ってもよいスタンダードな構成だ。
 スタック制限はバルジゲームの交通渋滞を反映させるために様々な制限が加えられている。スタック制限は常に適用され、移動や戦闘での超過は認められない。また、移動時で道路移動を使用する場合で出発点とこれから入るヘックスに他の味方ユニットの存在がある場合、道路移動の特典は無くなる。
 戦闘は攻撃するユニットに隣接する敵ユニットを攻撃しなければならないタイプのメイアタックで、戦力比で解決される。
 オッズ修正はないがダイス修正はあり、奇襲効果、装甲効果、同一師団効果がある。地形効果は地形レベルに影響し、その増減は戦闘結果で判定するときに使用する。
 CRTは2個ダイスを使用し、地形レベルと比較する数値が記入されている。地形レベルより下回れば損害は発生しないが、同じであれば1ステップロスか1ヘックス後退となり、地形レベルより1でも上回れば2ヘックスか2ステップ、あるいは両者の組み合わせで損害を出す。
 補給は補給源から連続した道路網をから3ヘックス以内であれば補給が通り、通らない場合は「補給切れ」、さらに周りが敵ユニット敵ZOCに囲まれている場合で、補給の通っている味方ユニットが3ヘックス以内にいない場合、「孤立」となる。補給切れ、孤立はそれぞれ攻撃力、移動力、防御力などに影響を及ぼす。また他にドイツ軍には燃料切れのルールがあり、任意に補給切れとなる場合がある。

 簡単に説明したが、プレイの方に話を戻そう。
 今回は選択ルールを取り入れ、孤立部隊の降伏ルール、スコルツェニーの第150装甲旅団のルール、離脱のルール、奇襲効果の強調、強行渡河のペナルティ、退却方向の制限解除のルールなどを取り入れた。概ね別冊2号のデザイナー氏のリプレイに近いルールでプレイした。今回の対戦では珍しくお互いルールを熟知していたため、あまり大きな間違いはない(と思う)。しかし筆者はリプレイ等は読んでおらず自我自流のプレイとなっている。

D12_1 第1ターン:ドイツ軍の移動/攻撃から始まる。北の第6SS装甲軍はスコルツェニーの第150装甲旅団の浸透能力を活かして、第14機甲騎兵グループの背後に回り込み、戦線の背後に回り込み突破を計る。ロスハイムギャップからの突破を計る。第5装甲軍は手薄なクレルヴォー前面をついてバストーニュ方面を目指す。奇襲効果から第1ターンのドイツ軍の攻撃は-2のダイス修正が付く。それに同一師団効果、装甲効果などをつけるとー4のダイス修正となる。
 幸いなことにドイツ軍の第一撃は、破滅的な結果はもたらさず、多くの部隊は生き残り、後退に成功した。第1ターンの特別ルールで連合軍は第1ターンに攻撃されたユニットしか移動できない。さらに離脱のルールと奇襲効果の強調ルールによりほとんど動けない。ドイツ軍の成果は第14機甲騎兵グループの後退によりロスハイムギャップに穴を開けたと言うことだろう。しかしこの穴が後に続く鋼鉄の奔流になろうとは予想できなかった。

D12_2 第2ターン:パイパー戦闘団はサンビットに突入し、これを奪取。その他のLAH師団はそれに続く。第3降下猟兵師団と第150装甲旅団は米第99歩兵師団を包囲下に置くべく行動した。LAH師団に続いて装甲教導師団がロスハイムギャップを通過し、米第106歩兵師団を包囲し始めた。第99、第106歩兵師団は第2ターンの移動制限で行動できないので包囲されるまでただ指をくわえてみているだけしかない。第5装甲軍のクレルヴォー方面は強行渡河の歩兵師団等が浸透し始め、次に来るであろう第2の危機を迎え始めている。対する連合軍は手持ちの兵力で退却を選択するしかないが、移動制限により大したことはできない。せいぜいパイパーの突出を防ぐために補給路の遮断ぐらいしかできない。初期のターンだから仕方ないと自分を慰めるしかない。それでも次のターンに置き去りにされてしまう部隊の数を見ると以降の戦いに支障を来すのではと気になって仕方がない。

D12_3 第3ターン:サンビットでの遮断が効いたのか北部のドイツ軍は西進はほとんどできず、後続の部隊が突破点に集まってきた。サンビットには第1SSと装甲教導が集結し、米第99歩兵師団の攻撃に第12SS装甲師団が参加し、シュネーアイフェルからエルゼンボルンまでの突破口が開いたことになる。さらにフォン・デア・ハイテの部隊が事もあろうに降下成功し、損害もなくマルメディに籠もってしまった。北部の連合軍は空から北お客と米軍の服を着たドイツ軍のために大混乱だ。 第5装甲軍は渡河作業を終え、第116装甲師団を中心にクレルヴォーから前進する準備が整い。今まさに突進する寸前だ。ここはここで守る兵力が少なく心許ない。第7軍の方面は強行渡河で米軍を拘束し始めている。南端からから遠い位置に座っていたのでこれは迂闊だった。連合軍は増援を戦略移動させ、サンビット前面の交差点に滑り込ませ、戦線の補強にばらまいた。クレルヴォーは守りきれるものでないから大きく下がってバストーニュで守ることに決した。しかし守りきれるか??

D12_4 第4ターン:サンビットに集結したドイツ軍装甲部隊は野に放つ猟犬のように前進する。先頭はフィールサムまで前進し、捕捉する連合軍を撃破している。第1SS装甲師団と装甲教導師団の一部はトロワボンを目指し前進する。エルゼンボルンでは第12SS装甲師団の一部が加わり連合軍に力攻をかけ、ジリジリと押している。とっとと下がりたいが後に増援が出てくることと地形がキツいので思うように防御変換できないのだ。バストーニュ方面は後続の歩兵師団を待ち、前進することに決したのか大きく前進しなかった。連合軍の防御はすんでの所でフィールサムとウーファリーズに兵力がたどり着き、これ以上の西進を食い止められる望みが出てきた。少なくとも時間は稼げるはずだろう。しかし、ドイツ軍の攻勢はまだ小手調べで本格的な攻勢が始まればまだまだ苦しむことになる。増援は各盤端から進入できるが、その時戦略移動隊形で進入できる。戦略移動隊形は道路移動が円滑にできるが、スタックの禁止、ZOCの喪失、地形レベルの減少などのペナルティが課せられる。しかし兵数が欲しい連合軍は戦略移動隊形のまま進出させ、敵予想進出地点にばらまくという必要がある。隊形変換は移動力消費が必要なため時と場合によっては普通の隊形で移動する方が効率的な場合がある。

D12_5 第5ターン:トロワボンの奪取に失敗したドイツ軍は装甲教導師団に西進を任せ、第1SS装甲師団はエルゼンボルン~マルメディ間の浅瀬を徒渉し、北部戦線の側面を叩き出してきた。強力なLAH師団の攻撃に撃破される連合軍歩兵師団。モンシャウ~エルゼンボルンの歩兵師団群が危機に瀕している。バストーニュ前面のドイツ軍は固められるバストーニュを無視し、後続の第26国民擲弾兵師団に任せ、ウーファリーズ方面に転進した。西部の戦線は薄いながらも機甲師団の戦線で、バストーニュからトロワボンまで何とか抵抗できそうだ。このターンに第82空挺師団と第101空挺師団が盤端から進入しており、次のターンには友軍前線の補強に間に合いそうだ。
 第6ターン:ドイツ軍は戦線中の連合軍部隊を殲滅すべく行動し、マルメディ方面に橋頭堡を築いている。エルゼンボルン~マルメディ間には第1SS装甲師団、第12SS装甲師団と第1SS装甲軍団がそろい踏みしており、北への突破/分断が最も恐れられる。バストーニュ方面では第2装甲師団の攻撃の前にジリジリと下がり、ウーファリーズは独軍の手に落ちた。バストーニュ付近は空挺部隊が到着し、マンバイ前面の森にも増援部隊が到着し、装甲教導師団を牽制している。マルメディ付近のスターブローにも増援部隊は到着しているが、第1SSの攻勢は止められるか?独第7軍もジリジリと前進しエッテルブリュック付近で対峠中だ。

D12_7 第7ターン:第1SS装甲軍団の攻撃は破壊的で、盤端まであと少しの所まで連合軍部隊を突破した。第12SS装甲師団の突破でエルゼンボルン~モンシャウ間の歩兵部隊は一気に危機に瀕した。西進が止まって大包囲はないと踏んでいたが、北で危機的な状況だ。大部の部隊が孤立化することに間違いない。
 第8ターン:北部では第1SS装甲軍団の攻勢が続く。どうしてもエルゼンボルン~モンシャウ間の歩兵部隊は救出できないので救えそうな部隊は救う方針に決する。北部では孤立化した部隊の壊滅はあったが、戦線の移動はなかった。マンバイ方面はドイツ軍が装甲部隊を増勢している。戦線はモンシャウ~マルメディ北方の湿地~スターブロー~トロワボン~マンバイ東方の森~ウーファリーズ西方の二股川~バストーニュという大きなバルジとなっている。ドイツ軍プレーヤーTS氏は攻めあぐねている。が、着実に前進していることには間違いない。筆者は苦しさの頂点からようやく解放されたような気がした。ここが攻勢のピークか?


 第9ターン:装甲教導師団の攻勢は連合軍の防御線をマンバイ~ラ・ロルシュに押し下げた。燃料切れの為、ドイツ軍の攻勢に鈍りがあるが、未だ西進し続D12_10けるのには驚嘆した。このターン初めて連合軍の反撃がスターブロー前面で敢行され、第1SS装甲師団の装甲擲弾兵連隊をマルメディ方面に押し下げた。エルゼンボルンの包囲され孤立化した歩兵部隊のおかげでかなりの部隊を吸引してくれている。
 第10ターン:ドイツ軍の攻勢はまだまだ続く。マンバイ~ラ・ロルシュ間で3個装甲師団混成チームが連合軍部隊を撃破し、デュルブイ、ホトンに接近しつつある。ムンバイには装甲教導師団中心の混成チームが接近している。マンバイ、デュルブイ方面に兵力を派遣するが間に合うか?このターンは北のモンシャウと南のエッテルブリュックを放棄し戦線を後退させた。ドイツ軍の攻勢は止まったと思っていたが勘違いのようだ。燃料切れの部隊のおかげでフルに攻撃ができないようだ。燃料切れはチャートで部隊数(師団数)を決め任意に選択される部隊が補給切れとなる。選択は連合軍が最初の1個を選択できるので、使いようによっては攻勢を一時的に頓挫させることも可能だ。

D12_11 第11ターン:トロワボンからデュルブイ方面にドイツ軍は第2装甲、第116装甲、装甲教導各師団、総統随伴、総統護衛両旅団の他にさらに第2SS、第9SS装甲師団まで投入してきた。この攻勢は今までにないほど強力で、あわや戦線崩壊と思われたがすんでの所で崩壊しなかった。それでも犠牲となる部隊が多い。トロワボンからデュルブイ方面が破れるとミューズ河まで遮るものは何もない。ドイツ軍は補給切れになるとあまり無茶をしてこないようだ。
 第12ターン:トロワボンからウェルホモンでステップロスした部隊での弱い戦線しか引けない。西はホトン前面でようやく渡河を妨害するだけの部隊を並べたが甚だ不安だ。最強力部隊の第1SS装甲師団はようやく北進を諦め、スターブローの装甲擲弾兵師団救出に向かい、スターブローを陥れた。第7軍方面はメルシュ方面まで進出できたが、それ以上は手が出ないようだった。どうやら数次にわたる装甲師団の燃料制限ルールで攻勢が不活発になってきているようだ。

D12_13 第13ターン:ついにデュルブイ方面で連合軍部隊は撃破され、第2装甲師団はデュルブイに到達、装甲教導師団の装甲擲弾兵連隊は渡河し、マルシュを窺った。間一髪のところで増援部隊がマルシュ方面に到達し、北部戦線も若干ながら補強された。今まで1ユニットで防御していた地点が場所によってはスタックで守っている。バストーニュ前面ではようやく連合軍の反撃が開始でき、第26国民擲弾兵師団を撃退し始めた。南でも2個師団到着し、第7軍は防勢に立たせられることだろう。南からの反撃を契機に北部での圧力も緩和されるだろう。

 第14ターン~16ターン:橋頭堡を拡大するため装甲教導師団はホトンを、デュルブイ方面からの徒渉を試みるために第2装甲師団を中心とした混成部隊が攻撃しだした。トロワボンは第3装甲擲弾兵師団を中心とした部隊が攻撃したが、いずれも大きな成果が上がらなかった。北部の連合軍部隊は徐々に強化され、スタックして守る部隊が多くなった。突出した装甲部隊の付近には機甲師団が接近し、反撃の機会を窺った。バストーニュ方面はドイツ軍をさらに圧迫し、ウーファリーズ目前まで前進した。南部での2個師団の攻撃は降下猟兵の遅滞戦術に悩まされながらも着実に前進できている。メルシュは奪回し、エッテルブリュックは目前だ。D12_16続くターン以降でドイツ軍の攻撃はトロワボンが攻略できたぐらいで概ねオルツ川のラインで防衛できた。反撃は南方からが主でバストーニュ方面の機甲師団はクレルヴォーに接近した。まだ続々とやってくる連合軍師団を見てTS氏はこれ以上押せないことを嘆いていた。しかし北部の一線にドイツ軍装甲師団が勢揃いしているのは圧巻だ。第14ターンまでドイツ軍の奇襲効果はダイス修正-1あるが、第15ターン以降は連合軍側の修正となり、連合軍の攻撃が成功しやすくなっている。またこのころになると師団効果が使えるようになるのでさらに成功比率は上がってしまう。

 時間の関係上ここでお開きとしたが、6時間そこそこで16ターンぐらい進むとはかなり手軽な方に属する。プレイ前は正直ここまで面白いと想像できなかったのでプレイ後の満足は非常に高かった。
 交通渋滞があちこちで発生するのでパズル的要素があり、かつ、史実のように展開したのには驚いた。今回北部に偏重した攻勢だったが、その破壊力は驚嘆に値する。ドイツ軍はスピードを優先する戦いを選択しなければならないのだろうか。連合軍は増援部隊を効率よく、必要箇所に送り込む必要があり、それはそれでプレーヤーは焦燥感にかられる。今回あまり橋梁爆破と陣地構築ができなかったが、この辺は次のプレイ時にもう少し考え直さなければならない所だと感じた。

 今回このゲームのプロデュースした山崎氏はルール上の疑問点や改定点を日本版ディベロップとして別項で改めてまとめてあり、かつ、ヴァリアントや選択ルールも個別にまとめられているので非常に参照しやすい。ルールもなじんだSPI方式で参照しやすい。

 別冊記事のリプレイは非常に気合いが入っており、ゲームの内容およびリプレイの書く参考になる。その他の記事も付録から話題が外れておらず、別冊らしく仕上がっている。 
 コンポーネント的にも特に不満はない。BOX相当のゲームにはプレイヤー補助シートが必須だと思っているので、もれなく付いているし問題ない。マップはプレオーダー時のサンプルマップよりやや明るめの霧がかかったような冬のイメージが漂っていて驚いた。多分にモニターと印刷時の違いかもしれないが、筆者はもう少し冬のイメージをと思っていたので嬉しい誤算だった。ユニット・カウンター類は非常に好感が持てる。何と言ってもユーティリティマーカーが付いていることは賞賛に値するだろう。あまったカウンター枠はエラッタユニットなどだけでなく、こういう何でも使えるカウンターというのは重要だと思う。切に今後ともこういう試みは続けていただきたい。また標準化していただきたい。筆者的にはFGBとFBBの両ユニットが黒色となってしまったことは残念だがプレイには支障はない。ユーティリティマーカーはプレイを円滑にする可能性がある。
 ともかくたくさんあるバルジだろうと嘗めてかかっていた筆者にとって驚きと興奮に満ちたプレイとなった。

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