チャンセラーズヴィル(DG)プレイ
今月は中々ゲーム会の都合が付かない。ヤキモキする中、K氏から非常呼集の電話が鳴った。18日に都合が付きそうとのことだ。この機会を逃すと3月までゲームをプレイすることは無いはずだろうと思って、他のメンバーにもメールを送った。急遽開催という障害にも関わらず遠路はるばる南大阪のMさんが参加の表明をしてくれた。
前回はコマンドマガジンのゲームを中心にプレイしたが、今回は各自プレイしたい作品を持ち寄るという方法で当日決めることにした。
筆者はDG社のS&Tのゲームを中心に持ち寄り、その時の気分で決める算段でいた。結局筆者の持ち込んだS&T誌のチャンセラーズヴィルとMさんの持ち込んだアクロス5エイプルズをプレイすることになった。
両方とも南北戦争の会戦級という事で、南北戦争の日となったが、必ずしも意図したものではない。今回は一番最初にプレイしたチャンセラーズヴィルをお送りする。
さて、ゲームは南北戦争のチャンセラーズヴィルという会戦を扱っている。おおよその展開はラパハノック河とフレデリクスバーグで対峙している両軍は、北軍の大軍は迂回機動で南軍の後背に躍り出たが、南軍の機略に富んだ反撃により、勢いを失い攻勢は失敗に終わった。
南軍のリーとジャクソンの際だった指揮ぶりを再現するにはそれなりのシステムが必要だろう。今回選択したゲームはそれを再現するためのシステムが採用されている。
このゲームにはエンパーヤー・アット・ウォーシステムなるものが採用されており、かつてDG社から発売されていたゲームのシステムのアップデート版となっているようだ。
システムは将軍の指揮能力がレーティング化されていて、チェックにより指揮下各ユニットの移動の制限が与えられる。名将と呼ばれるリーなどは最高ランクの「A」となり、「華麗なる機動」という移動力が倍加するという機会があるが、最低ランクの「F」は無能と言うことで移動も覚束ないという格差が付いている。
移動時、司令官はリーダーシップチェックで指揮範囲にいるユニットの移動状態を決定する。司令官が上位の司令官の指揮範囲内にいる場合、その上位の司令官のチェックで一括処理できる。もちろん指揮範囲外のユニットは自身のレイティングでチェックする。
ターン構成は増援→移動→砲撃→戦闘→回復というもので、移動は前記のリーダーシップチェックで決定し、砲撃・戦闘は3種類のCRTで解決する。特に戦闘CRTは「小戦闘」と「突撃戦闘」の2つに分かれており、兵科などで選択できる制限はあるものの相手に与える打撃と損害に微妙に差がある。
ゲームは神業的な指揮を再現するにはK氏しか不可能と断じ、K氏が南軍を担当し、無能な大軍好きな筆者がフッカー率いる北軍迂回部隊を担当し、M氏がラパハノック河の牽制部隊2個軍団を率いることになった。
オプションは北軍はストーンマンの騎兵部隊、ハントHQ、南軍のロングストリート麾下の部隊などだ。
ゲーム開始。おだてられて南軍司令官となったK氏は相変わらず誰が一番強いか調べるために閲兵活動を行っている。見るまでもないが南軍は最高司令官のリーを筆頭に最高レベルの指揮能力を持つ将星がおり、平均的に見ても南軍は北軍の指揮能力を凌駕している。
セットアップが終わったところで、M氏による戦史解説が始まる。エピソディックかつ如何に神業的な所行であったかを熱く語るM氏に圧倒されるK氏。
しかしその後敵方の筆者やM氏に「できるよできるよ。」「君ならできるよ。」などと洗脳まがいに説得されたK氏は北軍を「銀英伝で言うなら貴族連合軍だな。」とまるでリー=ラインハルト=K氏などというわけのわからない図式を打ち立てるようになる。
さて、筆者フッカーは情けないことに最低のFランクを与えられ、しかもK氏からはブラウンシュバイク公扱いされている。Fランクは一応「無能」という事で、かなりの確率で動けない・撤退するという駄目駄目ぶりだ。しかも特別ルールでフッカーの能力でリーダーシップチェックをせず、意図的に指揮範囲外に出て麾下の司令官の能力を使用すると軍崩壊レベルが上昇するという罠が仕掛けられている。軍崩壊レベルは部隊の混乱や壊滅で上昇し、逆に敵部隊を壊滅させると低下する。従って北軍はフッカーを使用せざるを得なくなっている。
ゲームに戻るとM氏率いる残置軍団は前面にいる南軍部隊が転進するまで動けず、特にすることがない。したがって筆者率いるフッカーの部隊が迂回機動を始めようとしている南軍に雪崩れ込み、出鼻を挫くのが期待された。しかし無常にもリーダーチェックは「O」の移動できず。何だかいやな予感がしてきた。
南軍は当たり前のようにリーダーシップを成功させ、停滞しているフッカーの部隊に取り憑いている。K氏は天才を再現するため史実とよく似た経路をトレースしようとしている。微妙に指揮範囲外にいるため次のターンにも攻撃にさらされることになってしまったが、最悪ロードブロックとして南軍の迂回を妨害しなければならない。
戦闘はマストアタックで、ZOCと同じFIZに後退してしまうと士気チェックを要求され、失敗すると除去されるので、場合によってはドッチャリ除去されたり、意外にしぶとく残ったりする。マストアタックの弊害とも言うべき犠牲攻撃や攻撃を強いさせる隣接などはこのゲームでも存在するし有効だ。
第2ターンにいたってはフッカーはリーダーシップチェックに失敗し、判定は「F」のマップエッジに向かって後退の結果が出る。退却するフッカー指揮下の部隊。もとより指揮範囲外にいた部隊はロードブロック確定となった。撤退は自軍マップ端に向かって後退しなければならないが、このゲームでは個々のユニットの移動力が少ない上に現在展開している場所は高名なウィルダネスという樹海が広がり思うように下がれない。これは攻める南軍も同じで、普通に動く分には敵の背後に回り込むのは容易ではない。
フッカーの後退は北軍プレーヤーに衝撃が走った。南軍にとっては好機だ。下がれなかった部隊に取り付いて高比率の攻撃をかけてくる。中には下がれなかったり、敵FIZに入ったために士気チェックに失敗して除去される部隊が出始め、軍崩壊値が上昇気味である。南軍はフレデリクスバーグの部隊もフッカー側に移動開始しているが、中には「I」判定でラパハノック河に突進している部隊が出ているが、躓いているフッカーを攻撃するために転進中だ。
更に続くターンのリーダーシップチェックでフッカーは動けなかったり後退したりと、とても挟撃に出るため出張ってきたとは思えない状態だ。特に動けないという状況は敵の攻撃にさらされる南側はかなり危ないが、東側に向いている2個軍団や軍直属部隊などは
隣の軍団の状況など知ったこっちゃ無いという状態だ。動かせないというのは非常にもどかしい。フッカーの指揮範囲外にいる部隊を移動させたいが、それは軍崩壊レベルに直結するため、おいそれと動かせない。
「うーん。ジャクソンが迂回する前に崩壊しちゃいそうですねえ。」
「フッカーがフッカーが。」
うわごとのように呟く筆者。よく考えれば「O」か「F」しか出していない。
幸いなことにロードブロックとして切り離さざるを得なかった部隊がロードブロックとして機能している点だ。ロードブロックが崩壊していたならばどうなっていたか判ったものではない。
南軍の方も思わしくない状態になりつつあった。フレデリクスバーグから来援するはずの部隊はリーダーシップチェックで「I」を出し、フレデリクスバーグに逆戻りする部隊が続出している。ある部隊に至っては側面に回り込むつもりが「I」を出してしまったために、北軍の中央部に突っ込んでしまっている。それでもフッカーを平押しに押せているので些細な事件として片付けられてしまっていた。
急上昇する北軍崩壊レベル。妄想の世界を行き来する筆者は、隣接や攻撃を受けるたびに「ストップ射撃!」とか「臨機射撃の実施」「僕の防御射撃フェイズ」などと妄言を吐いている。さらにはとあるヘックスに入ったユニットに対し「そこには残留FPが....」とかぶつぶつ言っているとK氏から「ハイハイ」と軽く流されるようになっている。敗軍の将にはかくも厳しい状況がまっているのか...と憤っていると、包囲されているロードブロック部隊を指さして攻撃を高らかに宣言している。
K氏の攻撃はそれなりに考えられて高比率の攻撃の陰に低比率の攻撃が混じっている。高比率を成功させ、戦闘後前進で詰めていき、低比率の攻撃を支援するように組み合わせている。マストアタックゲームではよく見られる光景だが、いかんせんうまいこと成功していないようだ。極端に低い目を出してしまったり、よく出るMC(モラルコンテスト)という結果で士気チェックがうまくいかなかったり、何だかよく考えると数こそ減りつつあるが、ロードブロックに掛かりっぱなしである。しかも上手いことに先の北軍ターンで砲撃を喰らってしまったためにクリティカルに強力なスタックが混乱するという悲劇に見舞われている。
しかし崩壊の足音はヒタヒタと忍び寄っている。崩壊ポイントを記録しているM氏から残量の報告が来るたびに映画ヒトラー最後の12日間でのヴァイドリングとモーンケのまねをして、「あと2日」「もって20時間」などと冗談交じりに返事をしている。急速度に崩壊が迫っている。いつもなら「西部戦線と東部戦線が...」などと冗談を言えるが、最後の言い訳「全くもって史実並みの結果を再現しました。」などと言おうかと草案の準備に余念がない。雄弁は私の取り柄だ。
ゲームも半ばを過ぎた頃、北軍は崩壊レベルを突破し、指揮範囲を喪失し、指揮レベルが一段低くなる。これからは屠殺が盤上を支配するだろうと天を見上げたが、そこには天井しかない。M氏に至っては何の活躍の場も与えられなかった。「すまぬ。M氏。」と心で詫びながら色々と言い訳を始めた。
さて、ゲームといっても北軍が崩壊したと言っても未だ南軍が低いレベルでの勝利を得たに過ぎない。男の子ならこのまま首都ワシントン(もちろん盤上にはない)へ進軍という花道が用意されている。K氏は低いレベルでの勝利を目指すタイプではなく凱旋門をうち立てるぐらいの大規模勝利を目指すタイプだ。
ゲームは続く。栄光を目指して。
しかし、ゲームはここから大きく変貌を遂げてしまう。
崩壊後のリーダーシップチェックは指揮範囲が自身のヘックスにしか及ぼさないため、全てのユニットが各個にチェックをしなければならない。ものすごく邪魔臭いことだが仕方がない。おもむろに振り続けるサイの目はまるで毘沙門天が降臨したのかと思えるほど絶好調で、今までのチェックが何だったんだというほど成功しまくる。
ほとんどの部隊が移動可能となり、おもむろに戦線というか隊列の補修に走る。さらには砲兵隊は前線に運び出され、フレッシュな南軍部隊にめがけて砲列をぶっ放し、次々と混乱に陥れる。
特にロードブロックとしておかれた部隊は効果的に南軍を粉砕し、南軍左翼は全部隊混乱するという悲劇が発生する。しかも北軍の1:3攻撃は成功するが、南軍の攻撃はことごとく失敗、あるいはモラルコンテストで失敗するという嘘のような事態に陥っている。
そんな事態が数ターン続いた。
怒り出すK氏。北軍に強いた1:3強制攻撃の罠は全てクリアされ、自分の高比率戦闘は砲兵に邪魔され、モラルコンテストでさらにクリアされる。蓄積する被害は気が付けば南軍崩壊レベルが近づきつつある。
「間違いなくおれはハインリキを名乗っていいかな。それともモーデルかな。」
奇跡の連続は北軍を活気づかせる。出てくる言葉も饒舌だ。悲劇に見舞われる南軍に対して「同情しないねえ....驚く人もいるだろうが我々は一度も強制していない云々。」と今度はヒトラー最後の12日間のゲッベルスの真似をして答える。歴史とメディアの合体は時としてギャグとなってしまう。
そしてあるターンの北軍のチャンセラーズヴィルに対する攻撃で南軍まで崩壊してしまった。この時点で両軍とももはやこれ以上の勝利条件は達成できないために終了することにした。
戦い終わって。筆者はこのEAWシステムは結構面白いように感じた。何と言っても自分では何ともならんもどかしさは指揮統制上ユニークと感じた。しかし、問題というか崩壊レベルに達してからの方が柔軟に機動できるかもしれないというのは、少し問題であるように思う。確かに確率としてはとてつもなく低いかもしれないが、それでもかなりの部隊が動けてしまったので何らかの縛りはあった方が良いのかなと言う気はした。
してやられてしまったK氏にとって見れば、CRTの1:3のDDが気にくわないらしく、1:3以下は1:3として扱うところからかなり小さい規模でも出ようによっては粘れてしまうのが気に入らないようだった。この辺はマストアタックの宿命みたいなものでもあるので仕方ないかもしれないが、ともかくあり得ないぐらいに粘ったのが今回の北軍だった。
今回、リーとジャクソンのレイティングAコンビは移動力が2倍になる「華麗なる機動」を見せることがなかったが、出たときはやはり驚嘆するに違いない。何と言ってもFランクの縛りにある部隊は、1/2以上の確率で動けないことが判ったからだ。これがゲームで1度2度出ると史実と同じようなチャンセラーズヴィルになるのだろうか。そう思うとリーとジャクソンは凄いことをやってのけたんだなあと感嘆してしまうことしきり。
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