BLOOD&IRON(XTRコマンド21)プレイ
東山三十六峰。
草木も眠る丑三つ時。
夜陰に紛れてけたたましく携帯が鳴り響いた。
「なあ。明日暇なんやけど。」
声の主はK氏だった。
何でも用事があったのが飛んだとか何とかで、ポッと時間が空いたのだという。
ポッと時間が空いた者と電話された者がたまたまスケジュールが合い、プレイをすることになった。
我々は唐突としてこのようなことが発生するのでいつでも戦えるようにスクランブル体勢を取っておかなければならない。古いキャッチコピーである「24時間戦えますか」のノリである(といっても戦えないケド)。
このようにして唐突としてゲームをすることになった。
今回は特に約束をしていなかったが、いつもプレイ候補のゲームを何個か持って行っていることもあって、最初から気分が向かないゲームを外して他のゲームに入れ替えた。その持っていったゲームはまあ、K氏がプレイしやすそうな、かつ自分も興味のあるものを持っていった。何個かプレイしたいゲームを入れ替えるというやり方はマンネリにならず新鮮な気持ちでプレイに趣ける。
さて、今回のプレイは英語版コマンド、すなわちXTRのコマンド21号の付録となったBLOOD & IRONをプレイした。内容はプロイセン・オーストリア戦争ケーニヒグレーツ会戦(サドワ会戦)の会戦級で初めてのプレイであるが、極めて簡単なゲームシステムであるため調子に乗って最初の5時間だけを扱ったモーニングバトルシナリオでなく本会戦のメインシナリオであるグランドバトルシナリオでもなく最もターン数が長いアーリースタートシナリオを選択した。
この選択は筆者ではなくK氏がおこなったものだ。プロイセン・オーストリア戦争というともはや高校の世界史の授業でビスマルクのプロイセンによるドイツ統一の過程で触れられることがあるが、ケーニヒグレーツ会戦までは習っていない。しかしこの会戦はプロイセン・オーストリア戦争の帰趨を制した戦いで、決戦を夢見ていたオーストリア軍が分進してくるプロイセン軍に包囲撃滅されてしまったという戦いだった。
南北戦争のゲティスバーグ会戦の3年後に行われた戦いとは言え、訓練の行き届いた正規兵同士の戦いで、片やモルトケにより新しい技術、鉄道と電信を利用した新しいスタイルの軍隊と、ナポレオン戦争そのままの軍隊の激突は興味深い。
なお、プロイセン軍は指揮統制・戦術面で凌駕していただけでなく兵器面でもオーストリア軍に水を空けていたので、密かにオーストリア軍が必敗に近いものがある。しかし防御側がオーストリア軍と考えて割り切ればそうでもないだろうと思いプレイすることにした。
アーリースタートシナリオは普通のシナリオよりスタート時間が早いため、自分の思い通りの戦いを演出するため配置から始めなくてはならない。
中央には守りやすい有利な高台と簡易陣地があり、オーストリア軍がその地で固守するように考えていたのかもしれない。しかし、最初からの高台の固守はその地は守れても、肝心の背後に流れるエルベ川への道を遮断されるおそれがある。
エルベ川はサドンデスに絡む地で、河に架かる全ての橋をプロイセン軍に奪われるとサドンデスを喫す。ただ単に守っているだけでは駄目なのだ。しかも勝利条件は部隊の壊滅や土地の占領にあり、サドンデスを除けばそれ以外にない。
と言うわけで背景をかじるとオーストリア軍は積極的な反撃を持ってプロイセン軍の攻撃をいなすべきか?と思えてしまう。しかしそうは問屋が卸さなくてオーストリア軍の行動は司令部からの指揮線が確立していることと、活性化チェックで司令部のレーティング以下を出さないと満足に機動できない。
さらに各軍団毎に反抗値が設定されていて、活性化チェックの際にその値(高い目)を出してしまうとその軍団のプレイ(移動)は敵であるプロイセン軍が行う。当然プロイセン軍プレーヤーは欲望の赴くままにユニットを動かすことは必定だ。
そう言うコマンドコントロールが効いているためにオーストリア軍はガチガチに守っていても守りきれないかもしれないし、あり得ないほどの華麗な機動によってプロイセン軍の出鼻を挫くかもしれない。
さて、プレイは始まった。戦場全体はなだらかな高原のようであり、小雨が戦場を覆っている。南北にエルベ川(東側)、ビストリッツ川(中央部から西端)が流れ筆者、河川の間に高地が存在しオーストリア軍が散在している。オーストリア軍はビストリッツ川を第1次ラインとし、遅滞作戦にすることにした。大抵の軍団はビストリッツ川沿いか陣地の周辺に存在するが、第3軍団だけが中途半端なところにいる。ケーニヒグラーツはエルベ川東南端に位置しサドワはビストリッツ川北西側に位置する。因みにケーニヒグラーツは現在ではチェコ共和国のフラデツ・クラーロヴェーという名前になっている。
デザイナーズノートにはやっちゃあいけないと書いてあるが、そんなこと知ったこっちゃ無い。天佑を信じて前進防御じゃ。
プロイセン軍は全くもってまるでナチスのドイツ軍のような勢いで攻めてきた。軍団という指揮統制上の縛りが少ないプロイセン軍はすいすいと進んでくる。もちろん、会戦級のゲームであるので、スタック制限のために交通渋滞が発生する可能性があるが、「偉大なる効率家」のK氏は組み合わせの妙技を見せてくれる。
プロイセン軍の不確実性としてあげられるとすれば、増援で投入される軍・軍団が全てダイスチェックで進入エリアと進入ターンを決められることで、ひどい場合ゲームに出てこられない可能性がある。もちろん増援時期をずらせたり、エリアまでもが変更できるので戦略的に攻勢の重点を変えたいと言うことが意図的に(もちろんダイスチェックでのランダム性はあるが)行える。
プロイセン軍の進入路はちょうど中途半端な状態で位置する第3軍団と反抗値の高い軍団の存在する地域から進入する。反抗値の高い軍団は活性化チェックで反抗されて勝手に陣形を乱されても困るので、予備状態というありがたいマーカーを置き反抗を押さえる。第3軍団は気合いで活性化させて位置取りのやり直しだ。先手がプロイセン軍であるために重点と思われるところに対応すれば良いので、活性化チェックであり得ないダイスの目を出さない限り理不尽に攻撃されることは少ないはずだ。
サドワに迫るドイツ軍プロイセン軍。第3軍団はビストリッツ川に延翼し、後方の第8軍団も前線に近づける。
第2ターン。プロイセン軍はビストリッツ川西岸から前進するだけでなく、増援はビストリッツ東岸側の盤端よりも進入してきた。こうなると先ほど延翼させたのが逆効果で第3軍団が包囲される可能性も出てきた。唸りを上げる砲兵。砲兵は視線が通れば攻撃時に任意の射程で、防御時に2ヘックス先までの敵を撃つことが出来る。効果は1ステップロスにあたる混乱を発生できるので最大2ステップロスで撃滅することも可能だ。
しかし、撃てども撃てども我が軍の方は信管が腐っているんじゃあないかと言うぐらいに炸裂せず危機が迫る。予備に後置していた部隊をもこの第3軍団エリアに向けて移動をするが、やはり半分は活性化に失敗する。ビストリッツ川南端に位置するザクセン軍も徐々に下げて間を詰める。
第3ターンはサドワから渡河を開始したプロイセン軍は東岸を南進する部隊と協力して第
3軍団を火の車に陥れた。相変わらず防御射撃や攻勢射撃は振るわず、いとも簡単に撃退される。唯一地形的に堅いところにいる部隊は相手を後退させる事に成功しているが、これは地形効果によって相手に損害数を1与えられそれを後退で消化したためだ。
損害はステップロスか全軍の後退を選べる。後退すると双方の残りの損害ポイントもキャンセルされてしまうので、一見お得に見えるが相手に損害が与えられなくなることと、後退した側はRマーカーを載せられ、次の自軍移動フェイズの最後に取り除かれまで敵ZOCに入れず攻撃できない。また自軍戦闘フェイズにその様な状態で敵ZOCにある場合は後退を強制される。堅いところで守られると出血は覚悟をしなくてはならないが、使い分けには頭を使いたいところ。
第4ターンには恐れていたところが起きてしまった。
「反抗」だ。
一応、反抗しそうな部隊というものは反抗値の目が低い部隊で、第4軍団の10が最低値となり、他の軍団は概ね11か12で簡単に反抗しそうにはない。その対策として、敵が離れている場合は予備マーカーを置き活性化チェックそのものをキャンセルしていた。
第4軍団は最もアブない部隊と言えるが、困ったことにエルベ川と高地の東端に位置し、またここが陣地という美味しいところなのだ。というわけで近づいてくるまでは動かせないし動かしたくないというのが本心で、予備マーカーを置いて安心をしていた。
ところが予想に反して反抗してくれたのはその第4軍団に隣接して陣を張っていた第2軍団で、ものの見事に11の目を出してしまった。今まさにプロイセン軍が陣に殺到しようかと言うときにノコノコと陣を後にし、各地に分散した。あるものは敵軍に突入し、ある部隊は指揮範囲を離れて遙かな旅に出た。まさしくK氏の欲望の赴くままに処理されてしまった。
確かに守っているだけではオーストリア軍に勝ちの目は無いようだ。このゲームではマストアタックで混乱状態に無ければZOC TO ZOCも許されているが、かなり高率でない限りは攻撃側に損害が出る。後退すれば相手に損害は与えられないので、どこかで出血はしなくてはならない。しかし出血して混乱した部隊は戦力が下がり、ZOC TO ZOCが出来なくなり次は壊滅になるので後ろに下げて再建をする...と言う風にかなりローテーションを要求されるので、オーストリア軍は出鼻を挫くためにも少ない反撃を実施し、次の攻撃の数を減らすという慢性ローテーション症候群を狙って見るのがよいようだ。
オーストリア軍はぼろぼろになった第3軍団を後ろに下げ、元々隣接していた第10軍団と後ろに来ていた第8軍団を投入し、さらに軍直属の騎兵軍団等を投入し部分的反撃を実施した。
第5ターン。プロイセン軍の攻勢は強力であるが勢いが無くなってきた。しかし全く失速しているというわけでなくて、次には復活しそうな勢いは持っている。増援が続々とやってくるのだ。さすがに3個軍団を投入したサドワ方面はプロイセン軍をして辛そうだったが、元第10軍団が守備していたその南とさらに南の守備しているザクセン軍方面にも増援が出てきている。ストレセティッツに後退して再建中の第3軍団と第6軍団をあて、ザクセン軍は騎兵スクリーンのもとに有利な地まで後退だ。相変わらず第2軍団は2回目の反抗で四散している。その穴は騎兵軍団と最後の最後の予備となった第1軍団を投入する。
第6ターン。騎兵スクリーンの甲斐もなくザクセン軍が推されている。逆に第3軍団と第6軍団はビストリッツ川に到達しそうな勢いだ。しかしもうカードは全て切ってしまっているのでこの後の珍事には為す術がない。
完璧主義者のK氏は戦術的に大きく間違えていないが、進展しない戦況に大いに不満で、連続してダイスの目が悪いことにあたかも自らの人生が間違っているかのような悟り方は傍目に見て面白かった。
第7ターンは調子に乗っている(とプロイセン軍には見えたのだろう)第3軍団と第6軍団によるバルジの攻撃で、手一杯のザクセン軍の攻撃も続行して行われた。
ザクセン軍が崩れると第6軍団が、第6軍団が崩れれば第3軍団がと言う風に総崩れになる可能性がある。が、予備は既に無く動かせそうなのは騎兵軍団のみだ。しかしこれにも時間が必要で、優位な地点を守るためには第1軍団との後退が必要で、現在その陣地変換中なのだ。もはや時間との勝負だ。
第8ターン。天候は豪雨。Heavy Rainだ。筆者が豪雨だ強い雨だというとその度に「Heavy Rainやろ」と訂正してくる。強い雨は砲撃が不利になるだけでなく移動力が半減する。この結果に舌打ちをしてまで露骨に嫌がったのはK氏で脳天気に喜んだのは筆者。
プロイセン軍はやっとの思いで陣形とLOSを調整し、さあこれから砲撃と突撃だと思っていたのに豪雨のために砲撃が不利になり出鼻を挫かれた。しかも迂回して機動などと言う膠着時の華麗な機動を見せつけるつもりだったのかそれも不可能になったので地団駄をふんだ。
攻撃が縮小気味になったので喜んでいたのもつかの間、移動力が半減しているので第1軍団の陣地変換が進まない。騎兵もあまり動けない。
第9ターン。またもや豪雨。プロイセン軍は完全に部隊をスライドさせ、ストレセティッツ方面から攻勢を企図しているようだ。うち続く豪雨のために何とかザクセン軍は満身創痍ながらも後退し、第3軍団第6軍団共にバルジを解消させた。最悪なことにプロイセン軍の増
援はビストリッツ川東岸だけでなくエルベ川東岸寄りからもやって来ている。もはやこれに抗するのは頼りない第2軍団第4軍団と来ている。砲兵軍団と第1軍団はようやく配備に付け騎兵軍団が戦略予備として活用できるようになったが、ストレセティッツ方面と隣接するザクセン軍方面はもはや崩壊寸前だ。プロイセン軍はサドンデスを狙える位置に付いたがたどり着けるかどうかと言うところだ。
時間も押し迫ったのでここでお開きとなったが、簡単なルールでサドワの戦いをプレイをしてみてかなり興味深くプレイできた。一方的な戦いとはいえそれぞれにテーマがあり、片や外線側方や内線側で指揮統制に問題があると来ている。時代背景に暗いと興味も湧かないかもしれないが、それでも簡単なルールとシチュエーションがそれを補ってくれるだろう。もちろん背景について知っておいた方がプレイは豊穣となる。
敵がある軍団を勝手に動かすという一点だけを見ればキワモノっぽいが、ゲーム自体はそうでもなく不幸なイベントに近いとの感想を持った。何故かXTRコマンドとCMJコマンドの会戦級は数点プレイしたが、どれもファーストインプレッションは良くないがどれもプレイすると興味深かったというのが印象的だ。
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