クラッシュ・オブ・ジャイアンツ(GMT)タンネンベルグ会戦プレイ
早くも8月だ。最近メンバーの家庭・仕事の事情によってプレイが低調で、集まる人数が去年に比べると低調さを裏付けてしまうが、年間トータルで見ると年々プレイするゲームの数が多くなり、全く訳のわからない状態が続いています。次回は盆休み期間に当たりますが、どうなることでしょう。
さて、今回はいつも通りWELL THEN.で告知したゲームを中心にその他その時に気が向いたゲームを何個かチョイスして持って行き、その時の気分でゲームをセレクトするといういつもながらの方式でプレイを始めた。
今回プレイしたゲームはクラッシュ・オブ・ジャイアンツ(GMT)のタンネンベルグ会戦シナリオと1942(GDW/CMJ57)をプレイした。
クラッシュ・オブ・ジャイアンツは過去にマルヌ会戦シナリオをプレイし、その特異なゲームシステムを堪能したことがあり、1942は120シリーズの1作としてこのサイズでは他にないテーマのためプレイすることになった。
今回の紹介はクラッシュ・オブ・ジャイアンツだ。
クラッシュ・オブ・ジャイアンツはWW1作戦級名ゲームデザイナーといえるテッド・レイサーがデザインした2inゲームだ。国内では国際通信社より雑誌付録と別冊という形で1918やウェン・イーグルズ・ファイト、1914などが発売されている。最近ではGMT社よりパス・オブ・グローリー、レッズ、グランド・イリュージュンなどと精力的に第1次大戦近辺の戦いをリリースしてそれぞれ評価が高い。
その中でもこのクラッシュ・オブ・ジャイアンツは珍しく会戦単体を扱ったゲームで、人気が高かったのか続編が出そうである。続編が出ることが確実であるので再度プレイしたくなったというのもプレイの動機の一つだ。
サイズとしてはフルマップ1枚に敵味方100個程度のカウンターを使用するので非常に軽い部類にはいる。
ルールは初期からシリーズ化する意図があったかはわからないが、ベーシックルールとシナリオルールに分かれ、シナリオによってはシーケンスに追加変更がある。
ゲームの特徴として、移動は所属する軍・軍団ごとにターン毎にダイス判定で移動力を決め移動する。普通の固定式の移動力を持つ作戦級に比べ計画通りに進んだり退いたり出来ない。戦闘は戦闘比で攻撃側の戦闘解決するダイスを振る数を決め、お互いに自分の損害を求めるというような感じになる。ダイス修正や攻撃側のダイスを振る数はチャートや地形で修正されるが、戦術能力値以下の目をダイス判定し成功すれば被害なしだ。ダイス判定に失敗するとステップロス・後退が待っている(攻撃側はステップロスのみ)。
また後退は両軍ともに方向が定められており、この後退方向は補給ラインの形成にも影響する。
さて、今回のタンネンベルグ会戦については会戦の詳細を述べるまでもなくロシア軍の大敗北に終わった。ドイツ軍はその勝利を1410年のタンネンベルグ会戦の敗北を払拭するほどの大勝利だとしている。なお、その1410年のタンネンベルグ会戦ことグルンバルト会戦もデザイナーのテッド・レイサーはデザインしている。
プレイは筆者がロシア軍、K氏がドイツ軍を担当することにした。ロシア軍はレンネンカンプの第1軍とサムソーノフの第2軍に分かれている。第1軍はマップ東端側から進入し、ケーニヒスベルク方面を目指す。第2軍は1ターン遅れて活性化し、南端からバルト海を目指す。第1軍はあまり攻撃に使えない騎兵が大量に存在し、軍としてのポテンシャルは低い。実際ルール上で歩兵部隊がステップロスすると移動力のレーティングが下がってしまうと言うおまけ付きだ。同じく第2軍は能力としては第1軍を遙かに凌駕する戦力を持つが、補給切れに対して耐性が無く、2段階ある補給切れ状態が1種類しか無く、史実通り包囲してくださいと言わんばかりの部隊である。
対するドイツ軍はフランソワ率いる第1軍団と後にヒンデンブルグが率いる第8軍があり、能力の高い第1軍団は部隊数が少なく、第8軍は雑多であり広範囲を守備しながら反撃をしなければならないという離れ業をしなければならない。
プレイは開始。ベーシックルールとの最大の違いはドイツ軍ターンに無線傍受フェイズなるものがあり、ロシア軍が次のターンどちらの軍が先に動くか決められ、しかもその時点でロシア軍は移動力のチェックをしなければならない。可変制の移動力とはいえ、ドイツ軍はロシア軍の移動力を把握しながら戦え、自分が移動力チェックでトンマな数を出して回り込まれない限り不利な状況は起こりにくくなっている。
ロシア軍は第1ターンは第1軍しか機動できない。第2軍は遅れてやって来る。第1軍の前面には騎兵部隊を中心としたドイツ第8軍と第1軍団が陣取っており、数的には互角程度である。しかし後背地の縦深を得るために前進をする。
ドイツ軍の方にも制限があって第1軍団長の有能さと性格を反映させるために、特別ルールが設けられており、軍団は4ターンまでに攻撃を仕掛けなくてはならない。出来なかった場合は敗北という項目があり、第1軍団は前線へ向けてまっしぐらに進んでくる。
ドイツ第1軍団は能力が高く戦術能力値が5であり、修正のない戦いでは5以下では被害が出ない。これはロシア軍が2とか3が大半を占めるので1対1攻撃でも有効な比率となり、十分に驚異な部隊である。幸いに2個師団しか存在せず、単独では大々的な戦果の拡張まで望めない。
レンネンカンプは前進した。友軍のサムソーノフの負担を減らすためだ。レンネンカンプの部隊はポテンシャルが低いのでドイツ軍を押すことは出来ないだろうが、存在は十二分に拘束できる。要はあまり死なないことが重要で、1個でも多く拘束するのが任務だ。まかり間違って早期に壊滅したり、しぶとく追いかけない場合はそのツケを史実通りにサムソーノフが支払うことになる。
突っかけるレンネンカンプ。しかし要注意は敵の騎兵部隊だ。やつらはこの可変制移動システムを持つゲームの中で卑怯なことに固定移動力を持つ。騎兵という兵種はこの時代には既に役に立たなくなってきているが、それでもあまり後ろをチョロチョロ走られるようなことでは困る。こちらの騎兵はそんな特典がない。
と言うわけで延翼した体勢で前進だ。
前進を始めるとドイツ軍がワラワラと寄ってきた。おなじみの騎兵スクリーンだ。おそらく騎兵スクリーンで遅滞戦術をとるつもりだろうが、こっちは移動力が低く回り込めるようなポジションを取れない。
そう言うつもりならばと、部隊をスライドさせて騎兵スクリーンにはそこそこの兵力をあて、南方をえぐりながら前進する構えを見せた。
第2軍は各個撃破を目論むドイツ軍の機先を制して優位な地形へ前進中だ。
2ターンまでの状況は以上のような形だった。2ターンまでのドイツ軍の運用を見ると、ドイツ第8軍はケーニヒスベルク以北の部隊はロシア第1軍方面に投入し、これを打倒してからロシア第2軍にあたると言うことが感じられた。その為兵力集中のために騎兵スクリーンで時間稼ぎをしているというわけだろう。第2軍に対する部隊は遅滞戦を容易にするために少しでも兵力を削ろうとの意志が感じられた。事前の歴史概況と自分なりの戦術論というのが、同じゲームをしていても微妙に異なるというのがこのホビーの面白いところだ。
第3ターンはレンネンカンプが驚愕する羽目に陥った。まず、移動力が優越できたドイツ第8軍及び第1軍団は兵力の集中に成功し、逆に兵力の集中はおろか体制すら整えられなかったロシア第1軍を襲い始めた。南方からドイツ軍戦線をえぐるとか考えていたが、逆にロシア第1軍主力が捕捉撃滅される恐れがある。
南方のロシア第2軍でも小競り合いが始まった。両者痛み分けであったが、筆者の感覚ではユニットの質が似たようなものなのと兵力から押せると感じた。要は移動力判定のみが作戦の成否を握っていると言っても良かった。
第4ターンはレンネンカンプは本格的な攻撃にあっている。攻撃など出来るような状態になく、いかに翼端を取られないかに腐心する。それでも自分が1、相手が6となると対策の打ちようもないのだが。遅滞戦を取りたくても後方縦深が狭く、前のめりで戦う。ここでの任務はドイツ第8軍大部の吸引だ。
ロシア第2軍方面は何とか相手の戦力とこちらの戦力が逆転し、イニシアチブを奪った。それでも極端な出目が出て、効果的な反撃や後退をされないように機動する。弱いなら弱いで主力で牽制し一部で側背に出る機動を見せることで後退を誘う。ドイツ軍には当分の間後詰めはないが、我が軍にはある。
第5ターンから無線傍受フェイズが有効になるので、ドイツ軍はロシア第2軍を指定した。我が軍は移動力がバレているので、どこまで進出できるかどんな戦闘が可能か対策を打たれて微妙なところに下がられている。しかし兵力は上回っているので次の次のための配置をとる。機動で相手を攪乱するのだ。
レンネンカンプも南部からえぐっている部隊がようやく主戦に合流し、あわよくば第2軍と同じく側背に出るような機動を見せる。うまくいけば優位な体制で戦いを挑め、察知されて逃れられても防御陣のバランスを欠くようになる。
第6ターンはまたもやロシア第2軍が指定された。森や荒れ地に陣取るドイツ軍は散在する湖沼などを利用して回り込めない配置で遅滞戦を行っている。地形を確認するために「この地名はなんじゃい!」と言いながら邪魔くさげにユニットを除けてみると「タンネンベルク」の字が現れた。不吉だ非常に不吉である。「わしゃ-ここで包囲されるのか?!」と独り言を呟いたがあっさり無視される。あと9ターン、何となく間に合いそうな気がするところが怖い。最悪のパターンはレンネンカンプが包囲されてポン、サムソーノフもやっぱり包囲されてポン。盤上には何も残らなかったという状況である。
その悪夢に近付くようにロシア第1軍の移動力は「1」となりK氏の高笑いが蒸し暑い部屋に響き渡った。ドイツ軍の移動は案の定「6」でそれはまさに鮮やかな機動と包囲によってあっという間に3個師団4個師団が包囲され、押しつぶされてゆく。声を失う筆者ロシア軍。
第7ターン。サムソーノフはヒタヒタと近づく死の影に怯えながら目の前のドイツ軍をいかにして消耗させるかに頭を絞った。何と言ってもサムソーノフの部隊は包囲されるとあっという間に能力が落ちてしまうという特別なルールがあるからだ。
幸運なことに我が軍の移動力はアベレージを出し続け、ドイツ軍を圧迫している。悪夢の発端だったタンネンベルグの地からドイツ軍を追い出し、さらに北上する。前々ターンより遅れて進発していた要塞守備部隊も前線に到着しそうだ。そうなれば敵の3倍近くになる。
南では順調とも言える戦果を上げているがレンネンカンプの部隊は明らかにやばい状況である。先ターンの殲滅戦で数個師団を失ったためにドイツ軍は一挙覆滅を狙って突端に取り付いた。もはや血に飢えたオオカミだ。しかし、天の救いか血に飢えた攻撃は失敗に終わり包囲されかかっている現状だけが保たれた。
第8ターン。ロシア第2軍は移動力が1となり、大きな機動が出来ない。嬉々とするヒンデンブルグK氏。しかし突端を取られない配置、あるいは損害の出る戦力比を設定できているので特に心配は要らない。バルト海は近いぞ!第2軍の足踏みを見て第1軍はスタックをバラして時間を稼ぐ方向に転換した。多分突っ込んでくるだろうが、大きな突破は出来なくなる。
ロシア第2軍前面のドイツ軍はやっと到来した好機を生かせず後退を選択する。このままひつこく付き合うと本当に包囲されてしまうからだ。ロシア第1軍方面のドイツ軍は強攻策に出た。うまくいかなかった先ほどの攻撃を実りにあるものにしたいとのカイザーの意向であろうか?それは複数箇所の突破によりブロックごと穴を開けるという方法だ。しかし結果は先のターンと同じで一部戦線に穴を開けることが出来たが大きく戦果を拡張することはならなかった。2ターンににもわたる攻撃の不首尾を嘆くK氏。
第9ターン。ロシア第2軍は前進するのみである。正直あまりドイツ軍を刺激するような機動はしないが、このターンより反転してきても良いように地点を選択し始める。いわゆる統制前進というやつだ。ロシア第1軍は相変わらず苦戦している。果たして生き残ることができるか?
ドイツ軍は今でも南では絶対専守、東では限りなく影響の少なくなるまでロシア軍の戦力を下げるという方針なのだろう。あと数ターンロシア第1軍がもってくれればドイツ軍が取り返しの付かない失敗に気が付くはずだ。しかしそれは両軍にとって綱渡りだ。
第10ターン。ケーニヒスベルグへの進軍が始まった。さすがにケーニヒスベルグに危機が迫っているとなれば東側のドイツ軍も反転に出だした。息を吹き返すロシア第1軍。ロシア第2軍の前面にドイツ第8軍の本隊が踊り出してくるのはまだまだ先の話だ。送り出された戦略移動ユニットはほとんどがロシア別働隊の進軍で出現するところが限定されるようになっている。このターンはお互いが移動のターンとなった。
第11ターン。我が軍はケーニヒスベルグの攻略を諦め、ドイツ第8軍主力への対応へシフトした。無茶をしすぎるてケーニヒスベルグ前面でタンネンベルグをやられてしまっては洒落にならない。現段階では既に我が軍の勝利ではあるが勝利レベルを少しでも下げるわけにはならない。ロシア第1軍で包囲行動に出ようかと企んだが、高機能なフランソワの第1軍団が睨みを効かせているので下手に動けない。
第12ターン。ドイツ第8軍先遣部隊はもうすぐそこだ。下手な配置は無用の出血を出してしまう。守りながら攻撃をする。あるいは攻撃しにくいように守る。ロシア軍にとってはもはや我慢の時間帯だが、ドイツ軍にとっては必死の情勢。先頭部隊はフリードランド付近だが、そこはケーニヒスベルグから僅かの所にある。ケーニヒスベルグを取り囲む陣地帯は歩兵部隊の進入で破壊されるが、要塞はそういうわけにはいかない。またケーニヒスベルグはドイツ軍にとって北の補給源だけでなく途方もないロシア軍の得点源でもある。よもやドイツ軍がここを取られるようなことがあったならば、ドイツ史においてタンネンベルグ会戦は忌むべき号として記憶されるであろうが、果たして今回はどうなるのか??
ロシア軍プレーヤーとしてはこのままケーニヒスベルグへ入りたいような気もするが、要塞であるので攻撃をせねばならず、要塞は戦闘結果表では普通の戦闘と違い損害が出にくいのと、要塞そのものがステップロスのように段階があり、かつ攻撃側が出血しやすいようになっているため逆に出血死してしまう可能性がある。
第13ターンと第14ターンはドイツ軍の反転に対しロシア軍が対応したもので大きなトピックはないが、勝利条件となる地点を少しでも多く奪っておきたいロシア軍は、西側においては少し無理をしても前進・攻撃をする。ドイツ軍の反撃がドイツ第8軍本隊よってのみ達成されると考えられるからだ。
最終ターンまでにロシア第1軍は第8軍の半部と第1軍団の防衛陣を圧迫し、半包囲の状況まで持っていくことが出来た。ロシア第2軍はケーニヒスベルグ前面のドイツ第8軍救援隊の攻撃を受け始め、土地を譲り渡すことはあったが、相手にもダメージを与えている。
最終段においてドイツ軍の機動で、奪った勝利得点地点を何点か奪回されたが、ロシア軍勝利の実態にはみじんの影響も与えなかった。
戦い終わって考えると7・8ターンあたりの優勢な時期にレンネンカンプの第1軍の圧迫に見切りをつけ兵力を転出すべきだったが、深追いしすぎて時機を失してしまったのがドイツ軍敗因の一つだろう。数ターンの気の迷いがこうまで影響し大きく変わるとは驚きだ。 劣勢な兵力側が優勢な兵力側に勝つにはイニシアチブを取る、戦術的に優位になるというのが重要なファクターというのを改めて認識させられた。今回ロシア軍プレーヤーとして史実通り壊滅の悲哀を味わう予定がひょんな事からバルト海まで行けてしまったので非常に満足だった。
ゲームとしては特異なシステムの是非はあるかもしれないが、ユニット数・密度・マップの広さ・ルール量が控えめでプレイアブルだ。歴史再現のルールも織り込まれており、会戦に対する興味もわいてくる。今回のように単一のマップで2つの戦線に分かれて戦っているので戦略的なバランス感覚というのも楽しめ、ターンごとに変わる移動力にゲームテクニックもそれなりに楽しめると感じた。
« パシフィック・ウォーの陸上ユニット(開戦編) | トップページ | 8月盆休み期間のゲームプレイ »
この記事へのコメントは終了しました。
コメント