ウクライナ'44(CMJ70)プレイ
東部戦線と言えば特に前置きや断りをいれなくてもWW2の東部戦線だと言うことはウォーゲーム界では暗黙の常識かもしれない。
東部戦線と言えばバルバロッサから始まりベルリン陥落までの長く、そして広大な空間で繰り広げられた戦いは様々なドラマがあり、ウォーゲームの題材として沢山あることから数々のゲームが出版されている。 言い換えれば「東部戦線」というジャンルがあると言っても過言でないかもしれない。
しかし多くは似たようなテーマに集中し、マンネリ化しつつあるのもまた事実と言えるだろう。
今回コマンドマガジンから発売された「ウクライナ'44」はそんなマンネリ化しつつある東部戦線のゲームでいかなる位置につけるゲームなのだろうか?それともよくある平凡なゲームなのかそんなことを考えながらプレイすることにした。
最初にお断りして置くが、毎度の事ながら初プレイでプレイ途中でタイムアップとなったために魅力・欠点の全てを体験や表現できていないかもしれない。しかしプレーヤーはそれぞれ最初は非常に懐疑的な態度でプレイしたことを告白する。
さて、本作はいわゆるフーベ包囲陣を扱った作戦級ゲームである。最近の各社オリジナルゲームは「いかに本作が絶妙の立ち位置にいるか」というのを説明してくれているので雑誌を読めば何となくそのゲームがよい印象に感じられる。
今回のフーベ包囲陣はゲーム化が少ないゲームで、今回の付録により数少ない穴が埋められた格好になる。しかしこのフーベって将軍はスゲー人でシシリーでも米英軍相手に手際よく撤退していることから撤退戦の名手のようだ。そんなフーベの軌跡はコマンドマガジンの付録でも追いかけられる事が出来、別冊7号と68号でシシリー島からの撤退、ダブルチャージ創刊号でATO誌3号のフーベ包囲陣がプレイできる。ってよく考えたらフーベ関係ありすぎ。編集部内にフーベファンでもいるのだろうか?
このウクライナ'44はウクライナ'43と名前が似ているが故に結構ハードなゲームと思われるかもしれないがそうではなく、ブダペスト'45(CMJ13)で使われたいわゆるブダペスト45システムをベースにしている。このシステムはジョン・デッシュが開発し色々と流用され、最近見なくなったシステムであるが細かく消耗してゆく様は他の作戦級とは一線を画している。
システムはドイツ軍-ソ連軍のプレーヤーターンに分かれ、ドイツ軍は移動-戦闘-機械化移動というフェイズがあるのに対し、ソ連軍は移動-戦闘あるいは戦闘-移動という組み合わせのどちらかを選ぶことが出来る。ユニットは戦闘力=ステップ数であるので普段は裏返して戦力を秘匿して行動する。戦闘は戦力比で見るからに消耗型で、高比率になると撤退を強制されるようになる。攻撃しても損害を喰らうのでナーバスになりがちだが、ソ連軍には兵力が、ドイツ軍には戦術的優位という損害オプションが与えられている。
ユニットはゴチャゴチャしていないシンプルなレイアウトで、このゲームで扱うユニットはあまり多くないので大半はマーカが占める。マーカーのほとんどは減少戦力を表すマーカーで、一応数は揃っているが足りなくなる可能性もある。
マップはコマンドスタンダードの美しい出来で、CRTが少し小さいことを除けば良くできていると言えるかもしれない。特筆すべきはマップ上にQRコードが印刷されており、携帯などで読み込めればコマンドマガジン編集部のモバイル版エラッタやQ&Aに直結できるという親切仕様だ。このような新しい試みは素直に評価したい。
全体を通してみるとかなり簡単にプレイできる作戦級だと言え、シチュエーションと展開さえ知っておけば何をすべきかが見えてくるし、セットアップするとさらに理解が深まる。
プレイは筆者がソ連軍をTS氏がドイツ軍を担当することになった。勝利条件は決められた都市/町を占領するサドンデスと部隊を撃破する得点差の勝利がある。
初期配置は今まさに延翼機動をし、包囲を試みようとするソ連軍とそれを防ごうとするドイツ軍いう感じで始まる。ソ連軍は突進の戦闘は戦車軍団や機械化軍団で、マップ端から大量の歩兵部隊が進入する。
大量の1ターン増援を見て独軍左翼が開放されているに近いことに戦慄を覚えるTS氏。開放された左翼の行く先は独軍補給源であり、サドンデス地点が控えている。「包囲してください」と言わんばかりである。ソ連軍から見れば「突っ込んでください」と言わんばかりである。穴があったら突っ込んでみようと言うことで突っ込んでみよう。後は神のみぞ知るだ。
この穴は突っ込まなければならない穴と言えば穴だ。ソ連軍の勝利はサドンデスを狙いサドンデス対象都市・町を占領すべくこの「開放された穴」を通るか、部隊の壊滅という勝利得点上の勝利を目指すためにこの「開放された穴」を利用しドイツ軍を補給切れに追い込むか2つに1つだ。
筆者的にはこのゲームでサドンデスを狙うのは先鋒部隊が針のようにピンポイントで点を突いているよで困難な事であるように思えた。ドイツ軍には増援が存在し、サドンデスの勝利条件ヘックスにからむ戦闘で敵の策源地から近く横合いから殴られる懸念があるからだ。
テルノポリは当然攻撃することとし、機械化と戦車軍団はドイツ第1装甲軍を包囲すべく大きく迂回する。その側面には第1ターンから大挙してやって来る歩兵部隊に任せ、ドイツ軍をグイグイ締め付ける。
ただ、1カ所に戦車部隊を固めてしまうと作戦の目的は明らかになりすぎるので、有力な一部は中央部に残し、伸びきったドイツ軍戦線で装甲部隊の足音が聞こえなくなる頃を見計らって支攻勢を行う目的で残置した。主攻勢方面が行き詰まったら、戦力を転換し新たな攻勢を行うためでもある。果たしてそんなに上手く行くのか。
ドイツ軍は盤端からの補給の他に航空補給というモノがあり、第1装甲軍が包囲されてしまった状況を再現するために盤端以外の補給源がある。制限された地域とそれを受けるユニットはやや限定された能力となるが、2段階ある補給切れがもう一段追加された形になり簡単に補給切れにはならないようになっている。
しかしゲーム終了時に盤端から補給線を設定できないドイツ軍ユニットは壊滅したものと扱われるために、ドイツ軍は航空補給はあくまでも脱出までの仮の補給源と考えなければならない。もちろんこの補給源はソ連軍に奪取されてしまう可能性もあり、配置と撤去は注意深くならなければならない。
ソ連軍の怒濤の進撃に苦慮するドイツ軍。ドイツ軍は装甲部隊は戦略移動できない代わりに機械化移動という二次移動が出来るのでほとんど戦略移動と同じぐらいの距離を走ってくる。戦略移動との決定的な違いは発着に敵ZOCの存在を無視できると言うことで、歩兵部隊と違いかなり柔軟に運用できる。
ソ連軍の先鋒はドイツ軍機械化部隊が多数守っているドイツ軍左翼を包囲せんと機動する。進撃するソ連機械化部隊とドイツ軍と接敵している部隊との隙間は後続の歩兵部隊で埋める。東部から攻める第40軍や第38軍は戦力比が立つところのみ攻撃をし、兵力を吸引する。
このゲームのユニットはソ連軍は攻撃力が強く防御力が弱い。ドイツ軍はその逆で防御力が強く攻撃力が弱い。戦力比は思ったほど高比率にはならなく、CRTマジックで攻撃側はほとんどのコラムで被害を喰う消耗型だ。
しかも現状の戦力を秘匿してプレイするので、戦闘するまで確定的な戦力がわからず手探りで攻撃となってしまう。これには副次的な効果があってとてつもなく弱い部隊が前線で戦線を張っている場合、相手に気づかれなければ攻撃を受けないというメリットもある。まあ戦場の霧というやつだがプレイが進めば自ずからとわかってくるので好き嫌いの分かれるところだろう。
攻撃は苛烈を極め、ソ連軍の損害も馬鹿にならない。東の第40軍は敵を駆逐し始め、第18軍前面でも後退するドイツ軍を追撃し始めている。先頭の機械化部隊はドイツ軍戦車部隊にケアしながら前進しているが、補給線の関係で大胆に機動できなくなっている。それでもドニエストル河の南では裏門攻撃の牽制のため派遣した2個軍団が順調に進んでいる。
不運なことに消耗した機械化軍団1個が突出する格好となり、ソ連軍の先鋒に痛撃を与えたいドイツ軍の格好の餌食となった。ドイツ軍装甲師団は束になってかかってくるとそれなりの戦力を持ち、強力なソ連軍といえども打撃を喰らう。今までドイツ軍師団にとって戦慄の対象だった機械化軍団があっという間に影響無いレベルまで戦力を下げられる。
しかし、未だソ連軍の攻勢モードは止まらず先頭機械化部隊が一旦停止すれば中央の戦車部隊がドイツ軍歩兵を圧迫し、戦線が綻びそうになる。
ドイツ軍は戦線整理と整理によって生まれた余剰戦力を破れた戦線に投入する。もはや自転車操業と言えるかもしれない。ドイツ軍の快挙としては先ほど痛めつけた機械化軍団を複撃し、完全に葬り去ったと言うことだろう。
それでもソ連軍の攻勢は続く。中央部で穴を開け、第40軍の方面でもドイツ軍の戦線を打ち破っている。ドイツ軍機械化部隊を忙殺するためにこれらの地点の他にテルノポリ南部でも攻勢に出た。
もはやこうなるとドイツ軍は戦線を下げるしか方法がない。戦車部隊はソ連軍機械化部隊に牽制されて大胆に持ち場を離れることが出来ない。
ソ連軍は妙に間隔の空いた道路網を確認し、補給線が引きにくいことを再確認しながら部隊の歩を進めた。ソ連軍側よりドイツ軍側の方が道路網が密なのだ。補給は簡単に説明すると補給源からの道路から5ヘックス以内というシンプルなモノで、フルマップでは妨害する地形があまりないから補給切れは起きないだろうと思ったら、道路の走り方に罠があった。今回たまたまドイツ軍がそこに目をつけなかったので交差点の占拠が出来たが、占拠できなければ1列共々前に進めないと言うことになりかねなかった。
ドイツ軍の後退はドニエストル河という天然の障壁を利用した陣の張り方で、せっかく第40軍の戦勝がフイにさせられてしまった。
ドニエストル河南岸の部隊はいいようにドイツ軍の後退について行っているが、本当にこのままでいいのか大いに疑問であった。しかしもしもの珍事を考えると引けなかったというのが真相だ。
時間が来てしまったのでお開きとなったが、ソ連軍は一見順調に進んでいるように見えるが、内実は無駄な戦いで傷ついた部隊が多いかもしれない。ドイツ軍装甲部隊が流動的な戦い方で、脆弱なソ連軍歩兵を狙い撃ちにしたらと考えると背筋凍るものがあった。
概ねゲームの半分をプレイしたが、特に問題は感じなかったが、プレイに慣れ敵の戦力をカウンティングするようになってしまうとこのゲームの評価は変わるだろうと感じた。しかし、ブダペスト45をプレイしたときに感じた疑心暗鬼のスリルはこのゲームでも同じく魅力であろうと言うことは間違いない。短時間でゲームのほぼ半分をプレイしたが、わりとスムーズに進んだ。プレイアビリティは戦力チットを頻繁に交換しなければならないのに関わらず高いと言えるかもしれない。リング・オブ・ファイヤのように8時間あれば充分プレイできるだろう。プレイの感想は思ったより面白いというもので十二分に評価できる内容だった。最初感じた懐疑的な感想はいい意味で裏切られた。
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コメント
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志乃様
コメントありがとうございます。下の私のコメントにもあるように大体4~5時間の競技時間で終わるようですね。長めに書いたのは色々なプレイスタイルがあるだろうと言うものを含んでの数値です。ちょっと長く書きすぎたかな。
投稿: ぐちーず | 2006/09/25 20:53
「中野歴史研究会」の志乃です。
Ukraina'44のプレイ時間は4~5時間程度と思われます。
まずはソロプレイを繰り返し、特に独軍の機動については慣れておく必要がありそうです。
投稿: 志乃 | 2006/09/25 08:25
takoba39714様
コメントありがとうございます。
プレイ時間に関しては会話を楽しみながらや、長考がちでもそれぐらいに納まるというもので、必ず8時間というわけではありません。今回は半分ぐらいまでで2時間ちょっとしかプレイしていないので、まあ申告の半分と言ったところですね。今回は早くプレイできた方ですね。
投稿: ぐちーず | 2006/09/13 22:08
>シチュエーションと展開さえ知っておけば何をすべきかが見えてくるし、
→そうですよね。フーベって新製品のアイスクリーム?程度のポン酢な私。
>セットアップするとさらに理解が深まる。
→こちらもそのとおり。東方面で直接18軍・38軍・40軍に面している独軍は、どのタイミングで戦線を縮小すべきなのか、ルールやリプレイ記事を読むのと、実際にユニットを並べて考えるのでは大違いでした。
>8時間あれば充分プレイできるだろう。
げげっそんなにかかちゃいますか。
ちょっと悲しいっす。
投稿: takoba39714 | 2006/09/12 21:34