パウルス第6軍(SA10)プレイ
日本の代表的ウォ-ゲームデザイナーの山崎氏は、国内ではオリジナルのウォーゲームデザインと過去名作の再版を手がけるという二本立てでゲーム出版を手がけている精力的な個人出版デザイナーだと思います。
そのデザイン過程はブログおよび雑誌SIX ANGLESで逐次報告されるという気合いの入れようで、デザイナーの考えやゲームの詳細がよくわかりブログなどは都度チェックを入れています。
さて、そんな山崎作品ですが、筆者その多くを持っておきながら中々プレイができません。特に最近見るからに質が上がっていると思うのですが、ダークディッセンバー以外手が出せておりません。それでは拙いと言うことでプレイをすることにしました。
さて、今回のパウルス第6軍は、過去に米国ゲーマーズ社から発売され、好評を博したスターリングラード・ポケットが元ゲームだ。コマンドマガジンからデザイナーズエディションとして再販され、今回のパウルス第6軍は第3版というわけではないが、3回目のスターリングラード戦となる。しかし記事中には本作を5作目!!と位置づけており、3度目の正直ならぬ5度目の何とかというやつだそうだ。
人によっては同じテーマのゲームを繰り返し出版することに眉をひそめる人もいるようだが、筆者はあまり気にしない方で好きならば色々なアプローチでデザインするのがよいと思っている。
特に今回はシステム及びテーマに大幅に手を加えられて、最初のゲームとはまた違うテイストのものとなっている。
過去作のスターリングラードポケットで思い出に残るプレイは、チームプレイでお互いの背後を守らないというトンチキプレイでソ連軍司令部が吹き飛ばされて呆然となり、寒々としたロシア平原の停車場でロシア軍プレーヤー2人が殴り合いを演じたという恥ずかしいプレイがある。そんな珍プレイを演じたにもかかわらず「何か」を感じた次第でした。
今回時間の都合上ほんの序盤しかプレイできなかったが、あまりのプレイ感の違いに驚いてしまった。これはシステム変更が大いに関係があるようで、日を改めて旧版との比較なんてやってみたいと思うが全くの別ゲームと言える。
簡単にシステムを紹介すると、移動フェイズ、戦闘フェイズ、突破フェイズという二次移動があるシークエンスを持ち、移動フェイズ後には敵軍の対応フェイズがあり、ドイツ軍とソ連軍とは動けるユニット数が違い、ドイツ軍の方が多くのユニットが動ける。
突破フェイズは移動できる兵科に限定があるとはいえ半分の移動力で再び移動できるようになる。移動フェイズ時に「予備」指定された部隊は全力で移動できるが、その為には予備指定するため移動フェイズでは半分しか移動できない。
移動はオーバーランがあり、ドイツ軍装甲部隊はZOC To ZOCが認められているので、ソ連軍は側面を気にしつつ突撃せねばならない。かといって慎重に過ぎると勝機を失ってしまうので、時としては犠牲をかえりみることなく攻撃せねばならないシーンもあるだろう。 オーバーランは移動コストの許す限りトライできる。またオーバーランできるフェイズも対応移動フェイズ、移動フェイズ、突破フェイズと最大3フェイズオーバーランできるので、1ターンあたりの破壊力は大きい。もちろん対応フェイズと突破フェイズには諸条件が付き、全てのユニットというわけではないが、それでもその可能性を考えると小戦力での遅滞戦はほとんど不可能である。
補給は大幅に変わったと言え、3段階になった補給切れはステップの多い戦力段階と共に戦力の消耗具合にバリエーションが出た。個人的に補給切れにせよ戦力段階にせよ多段階の消耗システムは非常に好意的に考えている。
プレイではソ連軍右翼は砲兵の支援も受け、予定調和とも言うべきルーマニア軍を吹き飛ばし、ドン河への大突破が発生した。ルーマニア第1、第2、第5、第4軍団のほとんどで穴が空き、ドイツ第11軍団が包囲の危機に陥った。
ソ連軍左翼ではルーマニア第7軍団、ルーマニア第18師団、第2師団がほとんど吹き飛び、ドイツ第4軍団を圧迫しました。右翼ほど大成功を収めたわけではありませんが、スターリングラードの背後に近いと言うこともあり、枢軸軍戦線の後退は直接的な脅威となったようだ。
対するドイツ軍は戦術的な優位を背景に機械化部隊を中心とした反撃戦力が積極的に反撃し、危機的な第11軍団付近の救援と第4軍団付近の助攻が行われた。
最終的には第11軍団は司令部を失ったものの、開囲には成功し貴重なドイツ軍部隊の救出に成功し、さらにソ連軍の攻勢を食い止めることに成功した。
第4軍団付近でも機械化部隊を中心とした反撃部隊はソ連軍の攻撃を食い止めて破滅的な危機からは逃れることに成功した。
ソ連軍の先鋒はドン河に迫り包囲が徐々にできあがるような期待感があったが、今ひとつ精彩に欠いた攻撃でストレスがたまる戦いだった。これはドイツ軍も同じでいつ破れるかとヒヤヒヤし通しだったそうだ。
中々こしゃくなドイツ軍で切歯扼腕したが、攻撃しているソ連軍は先鋒部隊で、後続の兵力が到着すれば、同じように対応せねばならない危機が多数発生するはずだ。その数を増やすことができれば、おのずから前進できると考えている。
ドイツ軍の戦術優位性、特に持っていたであろうポテンシャルの再現はソ連軍プレーヤの心胆を寒からしめるには充分だった。ドイツ軍プレーヤも持っているはずであろうポテンシャルを保持できたからと言っても楽勝というわけでなく、脆弱な側面を抱えての反撃だから鉄の意志と機を見るに敏な状況判断を求められるだろう。
今回、時間が足りずに途中でプレイをお開きとしたが、それでも次回プレイしたくなる何かを持っていた。デザイナーの狙っている元々持っているドイツ軍のポテンシャルを再現したの言葉は、我々の盤上でも再現され、反撃において遺憾なく発揮した。不可思議に引き籠もるドイツ軍ではなく、積極性を持つドイツ軍はスターリングラード戦のゲームとして面白いと感じた。それは対戦相手のK氏も同じで短いプレイで、面白いと感じていたようだ。
また時間ができればプレイしたいものだ。
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