パリ陥落1940(CMJ別冊)プレイ
最近は割とお手軽なゲームが多くなってしまいがちである。これはまあ、複雑な事情の為に選択肢がそうなってしまったりすることが多いので仕方がない。
もちろんお手軽でないゲームが嫌いだということもなく。やってみたいと思ったら何かとそう言う障壁は気にならなくなったりする。
しかし、ゲームは相手があってのものである。自分がそうだとしても相手が同じかと言えばそうでない。もちろん自分自身も常に同じスタンスかと言えば、その時々のやんごとなき事情によって常に一定ではない。
さて、我々ウォーゲーマーに多い悩みというのは購入数とプレイ数の関係だ。最近はウォーゲームバブルの頃よりも良い状態ではないだろうかというのが常々思っていることで、国内だけでウォーゲーム付き雑誌が3種類あるというのは未曾有のことではないだろうか。
従ってその出版数は年間に10冊10アイテム以上あり、それだけを購入したとしても毎月1冊ぐらいの割合でゲームが増えている。
月に1,2回プレイする機会があっただけではその全てをプレイすることは難しいのではないだろうか。時にはあるゲームにハマってしまったり、興味がなかったり先送りしたりすると長らくプレイされないゲームも出てくる。
それにプラスして、国内雑誌付録以外のゲームを買い出すとどうだろうか?その数は膨大に増えることになる。
今回はそんな忘れ去られたゲームをプレイする事にした。
今回プレイしたパリ陥落1940は米コマンド誌の42号で出版されたゲームで、日本版は別冊9号として出版された。
出版当初、ウォーゲームをよく知らない所に外注した為にトンデモデザインのマップとなり、多くの読者から批判が相次ぎ、差し替えマップが発表されたという曰く付きの伝説のゲームである。
フランス侵攻作戦、いわゆる「黄色の場合」を扱ったこの作品は、師団レベルで独仏国境を描いて、ドイツ軍の最終目的地はパリとなっている。
マンシュタインの計画したミューズ河沿いに右旋回するドイツ軍を演出するもよし、古来から伝わるシュリーフェン計画を再演するもよし、またはゲームの説明にもあるように自分なりの黄色作戦を立案するのも良い。フルマップ+ハーフマップの戦場で試してみるのだ。
史実では西方電撃戦と一括りでくくられてしまって最終的なフランス崩壊があっけなく終わったように思える。しかしオランダ、ベルギー、フランスの3カ国にわたる1ヶ月のキャンペーンだとなにがしかとエピソードは多い。
ゲーム上の勝利は得点差であるが、主にドイツ軍がどの様に戦ったかが評価される。連合国を降伏させて征服した場合1点、マジノ線を突破した場合1点などと戦果に応じて得点があり、3点あげればドイツ軍勝利と判定される。史実ではオランダ、ベルギーを征服したのみでゲーム上では引き分けとなる。言ってみれば史実以上の戦果をドイツ軍は上げないといけないのだが、果たしてそれは可能かと言ったところである。
攻める側のドイツ軍は数々ある得点源に向かって邁進してゆくが、さすがにガチンコに戦った場合、フランス側は史実を知っているので上手く立ち回れてしまう可能性がある。
それを防ぐ為にも史実を演出するルールがある。アルデンヌ突破作戦と空挺ルールだ。アルデンヌはフランス軍がドイツ軍の想定するコースとは違う地域で、おおよそ大軍が通過するに適さない地点と考えられていた。過去の実績も通行に困難なアルデンヌ高原からの進軍より、オランダ、ベルギーなどの起伏の少ない地域を進軍すると考えられ、フランス軍の戦争計画はそれをベースに考えられている。
しかし史実を知るユーザーはドイツ軍の奇襲はアルデンヌ高原から行われる事を知っている為に、この場所を手薄にする事は無い。かといって史実ベースの配置を行い、男塾ルールのように無理矢理ドイツ軍が突破できるような仕組みとなってしまった場合、戦略的な自由度がない為に一本調子のゲームとなってしまう。
そこで、本ゲームではアルデンヌ突破作戦というルールとダミーマーカーを併用する事で、完全な自由というわけでないが攻勢ポイントに幅を持たせている。
アルデンヌ突破作戦は特別ルールにより、連合軍の対応を抑制するものだけではなく、アルデンヌ高原に投入する部隊量を可変させることによって少量の部隊によるアルデンヌ高原への進入~大量の装甲部隊投入まで可変する事が出来る。もちろんアルデンヌへ行くA軍集団への部隊割り当てを少なくして、オランダを攻めるB軍集団へ大量に装甲部隊を投入してオランダ・ベルギーの平地を突進するという方針でも良いし、A軍・B軍集団へバランス良く配備して小包囲を連続させて連合軍を瓦解させても良い。
ゲームシステムは各軍移動と戦闘を2インパルスプレイすると言う単純なもので、各プレーヤーターンに移動と戦闘のどちらを先にするか選択できる。ZOCは補給と移動を止めてしまうが、連合軍は進入と離脱にペナルティがあり、ドイツ軍にはなく、かつドイツ軍機械化部隊は移動と補給で敵ZOCを無視できるという感じになっている。
補給は移動力と攻撃力が減少するのみで、戦闘は戦闘比、コラムシフトありと言ったところである。なお、連合軍と一部のドイツ軍は変動戦力であり、戦闘毎に戦力をダイスで決定しなければならない。
さてゲーム上はどうなったかというと。。。
序盤立ち上がりはドイツ軍は「アルデンヌ突破作戦」を宣言した。よって、盤上、特にアルデンヌ高原には部隊は配置されず、主攻勢が判然としない。もちろんこのルールによって連合軍のアルデンヌ高原への積極的な行動は出来なくなるので、戦いの焦点はオランダ、ベルギーとなる。
オランダ軍は弱体な戦力で、正直ドイツ軍の猛攻からはどうしようもない。ただひたすら時間稼ぎに邁進するのみだが、いずれ消滅するのは必定。
ベルギー軍はそこそこ戦える戦力を持っているが、本格的な戦いの為には英軍や仏軍の援護は必要だろう。
フランス軍はアルデンヌ突破作戦が選択されている為に大した反応は出来ない。遠く離れた地に展開する英軍も同じである。
ドイツ軍の攻撃は空挺降下から始まった。空挺降下は基本的にどこでも降下できるので、パリに降下させて連合軍に嫌がらせをするのも良い(いきなりサドンデスではない)。他のルールにあるようにこれは要塞地帯に降下させるのが最も史実通りであると言える。
ドイツ軍はマジノ要塞とエバン・エマール要塞の上へ緑の悪魔達を降下させた。空挺降下のルールは最初のユニットは1から5で降下成功し、それ以降のユニットは1ずつ成功のダイス目が減ってゆく。降下に成功すると降下したヘックスによって効果が変わるが、要塞城であれば要塞ユニットが破壊される。
このゲームではマジノ線をはじめ大小の要塞にユニット化されており、ステップを持っている。空挺降下はこの要塞ユニットのみを破壊する効果があるのだ。
ドイツ軍はエバン・エマール要塞の降下では失敗し、マジノ線の降下では成功を収めた。ドイツ軍の攻勢はオランダ・ベルギーへの攻勢と南部マジノ線への攻撃の2つが行われた。
装甲部隊と優秀な歩兵部隊による攻撃はオランダ軍を一蹴し、エバン・エマール要塞を陥れた。南のマジノ線への攻撃はフランス軍の可変戦力が立て続けにピンゾロや低い目であった為に有効な防衛が展開できずにあった言う間にマジノ線が次々と陥落してゆく。
あまりの調子の良い攻勢にケタケタ笑うドイツ軍プレーヤー。エバン・エマール要塞への空挺降下が失敗に終わった事で奇声を上げていた連合軍プレーヤーも顔色を失った。
オランダ軍はドイツ軍の攻勢の前に四散、急いでベルギー軍の戦線整理と英軍、フランス軍の援護が入った。南部のマジノ線のラインではなんと勝利条件の連続3ヘックスのマジノ線陥落が達成されてしまったので、これ以上の戦線拡大と悲劇を出さない為にも兵力が送られた。
第2ターンまでに何とかフランス軍と英軍はベルギー軍の両翼に展開し、一連の戦線が構築できた。しかしドイツ軍装甲部隊の攻勢の前には甚だ不安である。
ドイツ軍、アルデンヌから突進するA軍集団はセダン付近から突進して連合軍の背後に突進するものかと思っていたが、リェージェ付近に展開するベルギー軍掃討へと投入された。
第3ターンまでにオランダは降伏し、ベルギー軍との連携が崩れた。間一髪英大陸派遣軍BEFがアントワープに到着し突進を防いだ。
英軍は非常に強力な連合軍で、可変戦力でありながら、ベースとなる戦力も高い事と、移動力が大きい事が特筆に値する。当然のことながらその運用には慎重を要し、壊滅したBEFの数量は勝利条件に絡んでくる。
戦線が固まってくると困ったのはドイツ軍で、可変戦力とはいえスタックしているので読みづらくなったのか攻めあぐねている。突破する為には戦力を集めなくてはならないが、その為には疎となる箇所が出来てしまうのだ。
連合軍はこれを好機ととらえた。マジノ線からアルデンヌ高原に展開するフランス軍部隊を前進させ、手薄なアルデンヌ高原を突いて、ドイツ領内へと進出する動きを見せた。
それに対しドイツ軍は南部のマジノ線を攻めていた部隊から抽出し隣接するルクセンブルグ方面へと展開させた。
第3ターン第2カプレットで時間が来た為にお開きとなったが、現状としてはオランダの征服とマジノ線の攻略を達成が出来ているので、ゲーム終盤までにベルギーの征服が達成できるであろうからドイツ軍の勝利が達成できるのではないだろうかという観測結果が出た。もちろん今回は類い希なる運的な要素でマジノ線が陥落してしまった為にドイツ軍の勝利予測が早々に立ってしまったが、実際の所、ドイツ軍は苦戦するだろうというのが大方の予想だ。
連合軍は可変戦力の為にいちいち判定する手間がかかり、2インパルスの為にターン数としては多くないが手間はかかるが平易なルールの為に楽しめた。自分のマンシュタインプランを作るという楽しみもあるが、ダニガンのフランス1940にはかなわないが39年シナリオなど色々なケースを楽しめる。
筆者はフランス侵攻というとあまり良い思い出がないがこのゲームに関しては連合軍をプレイしたが受け身の戦いが多かったが、それなりに楽しめた。なりが大きいので気軽にと言うわけにはプレイできないが、簡単にプレイできる大きめのゲームというのは貴重であると思う。
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