アレクサンドロスの戦い(CMJ)その2
グラニコス河畔で嘘のような大逆転劇を見てしまった我々は一瞬フリーズしてしまった。というか何が起こったのか理解するのに時間がかかったと言って良い。
せっかくルールを読んで準備万端と思った矢先で、戦術ボード上だけでゲームが終わってしまったのだ。
アレクサンダー大王の東征がなかった世界史というのも面白いかもしれないが、プレイしている我々は何か釈然としない言い換えればサッカー南米予選で早々から敗退したブラジルのような救いがたい感覚に襲われていた。
もちろん我々はアレクサンドロスの活躍する姿を見たかった。それをK氏に託して筆者は悪役?に甘んじていたというのにこの体たらくである。
とりもなおさず我々は第2回戦目に突入した。筆者の頭の中には「リトライ」、K氏の頭の中には「リベンジ」の文字を浮かべてのスタートだ。
グラニコス河畔の会戦ではアレクサンドロスは史実同様に先陣を切って突進し、個々の戦力で劣勢なペルシア軍を打ち破ってしまう。アレクサンドロスのスタックは容易に高比率な戦力比で仕掛けられるのに対して、ペルシア軍のそれは低比率である。ひどい場合はロクでもない戦力比で戦いを挑まなければならない羽目にも陥る。唯一ギリシア人傭兵部隊のみは組み合わせによっては優勢、悪くてもトントンで事を運ぶことが出来るが、一点だけそう言うものがあっても全体が崩れると取り残されてしまう。
圧倒的なと思われたアレクサンドロス率いるマケドニア軍であったが、ペルシア軍弓兵の防御射撃や死に物狂いの反撃で損害は僅少と言えないまでにも負っていた。
各エリアには城壁ボックスがあるところがあり、そこが敵方であると攻城戦を行うことが出来る。兵は拙速を尊ぶと言うが、この場合はあまり当てはま らないかもしれない。ペルシア軍の籠もる城塞が残っている地からマケドニア軍が去ってしまうと、その地はペルシア軍支配へと復帰する。支配下のエリアには 兵力を補充することが出来るので、獅子身中の虫となりかねないし、何よりもエリアを奪えば勝利得点1VPとなるところがカウントされなくなる。マケドニア 軍支配に収めるためにはこれらを一掃〈あるいは兵力を)することが必要だ。
攻城戦は攻城側の歩兵戦力(+リーダー、攻城兵器)と防御側の城壁マーカー+都市守備隊の戦力差を攻城戦結果表で求める。その結果、城壁マーカーが全て失われると陥落という事になる。城壁マーカーは最大で5,都市守備隊は2まで積み込めるので兵力を注ぎ込めば最悪でも2年までに陥落は必至となる。しかしア
レクサンドロスの冒険行に2年の空費は許されるか?と言われれば「否!」であろう。アレクサンドロスはペルシア帝国を倒すだけでなく、インドまで行っても
らうのがMUSTである。
グラニコス河畔で勝利を収めたアレクサンドロス一行は、続いてイオニアのサルディスを攻め立てる。サルディスを難なく攻め落とし、イオニアを我がものとした彼らは次に目指すは勝利条件であるマケドニア軍の勝利目標チットのあるフリュギアだ。フリュギアには先ほどの会戦で潰走させられているペルシア軍残余とペルシア側の司令官メムノンだけである。都市であるゴルディオンにはゴルディオンの結び目と言われる。硬く結わえられた結び目があり、これを解くものがあれば、その者がアジアの王者になると言う伝説があって、それをアレクサンドロスは一刀両断して解いたとかしなかったとかという言い伝えがある場所だ。
当然のことながらK氏のアレクサンドロスはそんな伝説を知ることもなく、あっさりと在地のペルシア軍を一蹴してゴルディオンの結び目をK氏の宝物倉(トレイ)へと格納した。まさしくその一連の動きはドラゴンクエストでアイテムをゲットするようであった。
しかしここからマケドニア軍は後世から苦難の行軍と称えられる(ありませんよ)に見舞われることになる。
ターンの冒頭に補給状態を判定するフェイズがある。当時の戦争は現地徴発の補給であり、あまりに徴発し続けるとその地が枯渇してしまう。それを判定し補給状態を決定するがその判定の如何によっては枯渇し、軍隊が損耗してしまうと言う古代戦の負のスパイラルに突入してしまう可能性がある。
判定方法は1/3で補給状態にあるか枯渇状態であるか判定し、さらに枯渇状態であれば戦力の多可、そのエリアの地形状態などを補給損耗判定表なるチャートで判定する。
大まかな言い方をすれば土地が痩せているところで大軍を集中させると損耗しやすくなると言うわかりやすい表で、最悪7ユニットもステップロスするという恐ろしい事態に直面する。
こういう書き方をすると大抵この後にそう言う状態に陥ったシーンが語られることが多いが、実際その通りでペルシア軍は損耗することもなく存在できているが、マケドニア軍は戦闘で負った損害よりも補給での損耗の方が多いというペルシア軍が当初予想していた引き込んで損耗させると言う状態になりつつあるのでペルシア軍はあたかも独ソ戦のソ連軍のようにニヤリとする。
アレクサンドロスは悟った。大軍を集中させると損耗が激しい。ならば分散させて、スピードアップだ。必要な時に集中させればいいから分進合撃だ。
と言うわけで、アレクサンドロスは部隊を二手に分け、アレクサンドロスの主隊とパルメニオンの支隊に分かれた。主隊は主将が存在するためにあまり過激に前進すると戦力が少ない状態でペルシア軍と対峙しなければならない局面が発生するやもしれないので、慎重に歩を進めゆっくりとカッパドキアへと進出し、支隊のパルメニオンは残してきたハリカルナッソスのペルシア軍の城を落としつつキリキアに進出していた。
筆者のペルシア軍は王のダレイオスが敗れてしまうと後がないので、指揮官のベッソス
を使ってシリアのテュロス要塞へ兵を送り込む。敵の目前で部隊を分かつことは危険だが、マケドニア軍は相次ぐ補給難のおかげでかなり疲弊して積極的に討って出られない。
エリアを支配するという事は、すなわち補充ポイントが確保されるという意味と同じである。序盤のペルシア軍はエリア支配がほとんどに及んでいるためにマケドニア軍と比べると莫大な量の補充ポイントをもらえる。
補充ポイントはある一定の量を支払うことで、ステップロスを戻したり、新しい兵を雇用したり、城壁マーカーを購入したり出来る。
重要なのは補給フェイズの後に補充するので、マケドニア軍などは疲弊したユニットを元に戻すだけで補充ポイントが吹き飛んでしまう。しかも今回に至ってはほとんど直しきれない状態だ。そんな補充の火の車状態のマケドニア軍に対し、ペルシア軍は金にものを言わせ、兵を雇用し、城をうち立てあっという間に防御ラインを構築してしまった。
消耗するマケドニア、潤うペルシア。対照的な事態にマケドニアプレーヤーからブツブツと文句が飛び出してくる。
しかしこのまま時間を空費するには忍びないのでマケドニア軍は動いた。
パルメニオン率いる別働隊はシリアへ、山地のカッパドキアでは疲弊しかしないのでアレクサンドロスを肥沃なアッシリアへと進出させた。
パルメニオンは時間をかけてシリアのテュロスを陥落させ、アフリカへの道を確保する。
アレクサンドロスの主隊はアッシリアで、バビュロニア他のペルシア軍の救援を遮断する意図があるのだろう。
筆者ペルシア軍は大胆にもダレイオスからさらに兵を引き抜き、メディナのエクバタナを強化し、さらに別働隊を使ってアルメニア経由でカッパドキアへ進出し、マケドニア軍が占領した元ペルシア領を再占領して背後を荒らし回した。
背後の占領地を荒らされることに動揺を隠せないマケドニア軍だが、どうやら固い信念の元にこの攻勢に出ているようであった。
逆にここぞ!とアレクサンドロスとパルメニオンは集中を開始し、バビロンにいるダレイオスにはアレクサンドロスが、カッパドキアのメムノンにはパルメニオンがという感じで一挙攻勢に出てきた。
ダレイオスの手には補充で急速に膨らんだ兵力があり、アレクサンドロスのもつ兵力よりユニット数が多いとは言え、個々の戦力で見るとグラニコス河畔の再演である。史実のイッ
ソスの戦いやガウガメラの戦いとは違うシチュエーションだが、強力なユニットの前にステップロスを強いさせることが出来たとは言え、グラニコスの時のように芯になって戦える部隊は逆に減っているので、たやすくアレクサンドロスの攻撃の前に部隊は四散し、退却戦の途中でダレイオスは戦死、マケドニア軍の勝利目標チットでもあるダレイオスのロイヤルファミリーも捕らえられた。
パルメニオンはややベッソスとの戦いに苦戦したが、兵力が多いこともあり先に敵の後衛まで突入できたので、ベッソス率いるペルシア軍は退却を余儀なくされた。
今回のマケドニア軍は小癪にも野戦が目的で攻城戦は後回しとの意図のようで、要はこれ以上ペルシア軍兵力が増えて戦いが難しくならないうちに叩いておこうという事で、ペルシア軍はその構想の前に敗れ去った。
ペルシア軍は消耗戦を戦うのに徹していれば、もう少しやらしい戦いとかも出来ただろうが、大帝国のプライドが許さなかったかマケドニア軍の攻勢をまともに受けてしまった。
マケドニア軍は一時期はバビロンの隣接エリアであるスシアナまで進出できたが、バビュロニア攻略のため一旦下がる。
ペルシア軍の主力は壊滅してしまったが、ベッソス率いる新生ペルシア帝国は健在である。アレクサンドロスの手の届かないところで軍勢を再建することにした。
忘れてはならないのが、カッパドキアに進出した別働隊とシリアのテュロスだ。テュロスは今回の会戦で攻撃を免れているので未だペルシア領であり、別働隊はさらに歩を進めてフリュギアまで進出である。今の所、失った兵力は多いがエリアは着実に取り戻している。
アレクサンドロスは忘れ物を取り戻すかのようにバビュロニアを離れ、シリアのテュロス
を目指す。パルメニオンはガザを落とし、さらにエジプト、リビアへと足を伸ばし、アモン神殿にてアモンの神託を受けた。これはマケドニア勝利目標チットのある。リビアのアモン神殿へ行き勝利目標チットを得たという事だ。本来ならアレクサンドロスが行かねばならないが、「マケドニア軍」という表記であったのでパルメニオンが神託を受け、アレクサンドロスの世界制覇を約束された。その挙にペルシア軍総ツッコミ。
「な、な、な、な、なんでやねん!」
涼しい顔をするアレクサンドロス。
その間にも新生ペルシア帝国(そんな国ありません)は勢力を盛り返し、バビュロニアまで奪回し、別働隊はイオニア、キリキアまで奪回に成功。アフリカ以外は奪回できているので版図は序盤から少し小さくなったぐらいだ。
実はこの間にイベントが発生しており、スパルタの反乱判定をしなければならない。これはマケドニアのギリシャ統一を快く思わないスパルタを中心とする反マケドニア勢力の蜂起であり2度この判定がある。この反乱が発生するといきなりスパルタが寝返りマケドニアは腹背に敵を持つことになるわけだが残念ながら発生しなかった。発生すると強力なスパルタ軍を受け取れたが、マケドニア軍が全く対策を講じていなかったわけはなくて、実はこれらの対策で有力な一部をマケドニアに残置してある。
シリアのテュロスが陥落するまではマケドニア軍はずっと我慢の子である。ペルシア軍が背後を脅かそうがお構いなしである。
テュロスが落ちた瞬間、ペルシア軍はササッと残置部隊を残して決戦回避である。マケドニア軍はアッシリア、アルメニアと攻め上がり、小アジアとメソポタミアを切り離し、分遣した指揮官で残置部隊の討伐にあたらせるという掃討戦を開始しだした。
さらにメディナ、バビュロニアと確実に占領し、確実に奪回されないようにスチームローラーのごとく前進を開始した。ゆっくりであるが確実に圧殺するこの戦略に新生ペルシア帝国は奪回したエリアを次々奪い返されるだけでなく、メディナまで奪い返されてもはや前線がスシアナ、ペルシス、パルティアまで押されている。
こっちもただ単に押されているだけではこのままズルズルとインドまで行かれてしまう。タイムスケジュール的には遅れていたマケドニア軍の前進が、この所の前進で追いついて追い越しそうである。それは拙かろうという事で、ライヘンバッハプランばりにアレクサンドロスは相手にせず配下の武将のみ相手にすると言うことで、パルティアに突出するマケドニア軍別働隊に襲撃をかけたが、あと一息のところでマケドニア軍敗走という所であったが、危ないと見たK氏は部隊を抽出して後衛に部隊を走らせて対応の取れないペルシア軍を逆に敗走に追い込んだ。今回会戦に優位に進められた理由は今まで芯のない部隊という言い方をしているように打撃力の乏しい軽歩兵や軽騎兵の類が主力であり、水増しされたコンクリートのように脆弱であった。今回の負け戦の中で、芯になる部隊をコツコツと補充し芯になる部隊のみで構成された部隊がこのパルティアで終始マケドニア軍を翻弄したことに今までの補充方針が悔やまれる。
時間が来たので途中で切り上げたが、概ね25ターンまでプレイできているので前328年だ。史実でも近いエリアまで攻め込んでおり、ダレイオスが死んだのが早かったことを除けば史実並みあるいは史実より少し遅れているぐらいで、最終的にはソグディアナロックでアジア一の美女ロクサネとアレクサンドロスが出会い、そう遠くない将来にインドでポロス率いるインド軍と一会戦行われるであろう。ペルシア軍とは違う戦闘スタイルのインド軍とマケドニア軍の戦いも楽しみだったが、残念ながらお開きである。
ゲームをプレイし終えて、史実と同じくダレイオスを破った以降はやや中だるみ的なものを感じた。しかしそれはプレーヤの腕でカバーできるであろう。それでもペルシア大帝国の瓦解を体験できマケドニア軍の精強をこの目で確かめることが出来た。今となっては古いゲームで解釈が難しいところもあったが、概ね想像力で補える範囲であったのでゲームの支障にはならなかった。
本誌(別冊)の記事や、映画などコンテンツはまだ豊富であるので歴史を追体験するという意味でもしやすいし楽しめた。また、アレクサンドロスのゲームでありながらアレクサンドロスに関係のないヴァリアントも用意されており、一度で三度おいしいという感じになっている。アレクサンドロス死後を扱うディアドコイ、後継者戦争は一応マルチプレイにも対応しているので歴史趣味のあるもの同士なら一興ある作品かもしれない(プレイして無いので。。。)。
久しぶりに古代史それも戦略級をプレイできたのでお互い満足を得た。次はチャンチャンバラバラの会戦級をプレイしたいものだ。
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