戦術級の砲撃(東部戦線〈EP/CMJ〉編)1
戦場では最も多い死傷のパターンが砲爆撃によるものと言われている。砲撃の恐ろしさはそれこそシェルショックなる病まで引き起こすほど人体には衝撃的な体験であるとされています。
果たしてウォーゲームではどういう効果があるのかどういう表現をされているのか見てみよう。
第1回目はエポック社から1984年に箱入りゲームとして発売され、2005年に国際通信社からコマンドマガジンの別冊としてZIP袋入りで発売された「東部戦線」だ。
「東部戦線」と言えば筆者が初めて買った本格的ウォーゲームの一つだ。
「東部戦線」は実は「装甲擲弾兵」というゲームの続編であるというのはよく知られた事実である。「装甲擲弾兵」シリーズは小隊規模の戦術級という事で、他の有名な戦術級に多い分隊よりも大きな組織の戦術級であるから、細かなルールというのは少ない。そう言う意味では精密な兵器や戦術の描写は再現できないが、小隊クラスに拡大し、精密度は目をつぶりながらプレイアビリティを高めてドライブ感ある形にまとまっているため、それなりにファンは多い。
装甲擲弾兵シリーズの特徴的なのはイニシアチブ制と言うことにつきるだろう。イニシアチブチャートに従ってそのターンにどちら側が先攻となるかを決める。
イニシアチブを有している側は先攻ととして、そのゲームターンの優位性を得る。優位性とはゲームターンは共通してプレイするフェイズを除くと先に動いて射撃をして、突撃の組み合わせを決めることが出来る。後攻は最後に動けるのみで支援射撃以外で射撃はストップ射撃という臨機射撃しか出来ない。
イニシアチブを得ない限りは自分から主体的に攻撃できないので、そのターン中は基本的には受け身だ。そういう「戦機」を導入していることもあり、圧倒的に攻勢をかけている途中で相手側のイニシアチブが移り、あともう少しでと言うところで敵に反撃を喰らう場合が発生する。
本題に戻って「砲撃」は本ゲームでは間接射撃兵器が担うことになっている。これには2種類あり1つは盤外砲兵、もう1つは盤上の砲兵ユニットだ。
両者とも支援射撃フェイズに射撃を実施する。
写真のように大平原でポツーンと歩兵ユニットのスタックがいたとしよう。おおむね戦術級ゲームでは開けた土地にチョコンといるとロクな事がない。大抵御法度な所作ではあるが、砲撃の威力を垣間見えるようにワザとこういうシチュエーションで見てみよう。
なお、今回の演習に於いてはドイツ軍がイニシアチブを取っている状況でソ連軍のスタックは視認されていると仮定する。
砲撃力はシナリオで決められることが多いが、架空の戦いであるのでとりあえず、適当なシナリオから選択した。このシナリオの砲撃力の決定方法はダイスの目+αだ。もちろん他のシナリオではダイスの目そのままであったり実数だったりする。d+1/d+2の読み方は左側が対装甲の場合の砲撃力で右側が対非装甲の砲撃力である。対装甲ははダイスの目に+1を非装甲の場合はダイスの目+2という風になる。
今回の目標はソ連軍の歩兵であるので非装甲だ。従ってダイスの目+2が砲撃力という事になる。
ダイスを振ってみよう「5」の目が出た。5+2=7が今回の砲撃力という事になる。なお、このゲームではダイスは10面体ダイスを使い0の目は0である。
砲撃力7はこの欄を見なくてはならない。結果は0~12までバラエティに富んでいる。今回の設定ではダイスの目を修正するような案件、例えば地形修正などは発生しないので3~9が敵に与えられる結果と言えそうだ。なお、ソ連軍歩兵の防御力は4であり、4以上の目が出れば何らかのダメージを与えることが出来るが、例えば3では何のダメージもない。従って0以外であれば何らかのダメージを負わせるわけで、非常に期待が持てる内容だ。
このゲームでは目標ヘックスにいる各々のユニットに対し砲撃されるので、各々のユニットの結果を求めなくてはならない。5ユニットいるので5個のダイスを振る。本来なら個別に振るべきだが同じ戦力、同じ兵科のユニットのため時間短縮を兼ねて一気に振る。
各々この黄色の枠と赤線の交差するところを参照するわけだ。ダイスの目と防御側の防御力と比較して同数~+1であるとD状態という部隊が混乱して散開した状態となる。これが差+2となるとDDという部隊が混乱して士気低下している状態となる。それ以上、すなわち差+3であると防御側のユニットは壊滅したものとしてゲームから取り除かれる。
今回あまり極端な目は出なかったが、ドイツ軍にとっては目標を達成できるような内容だ。
結果を照らし合わせるとこういう感じになる。無傷・DD・DD・DD・壊滅となった。ユニットの横に置いてある赤いマーカーがDDマーカーだ。今までピンピンだった歩兵のスタックがあっという間に死の淵をさまよう兵隊の群れになってしまうと言うことは驚きだ。まさしくこれが砲撃の恐ろしさというものであろうか?
支援砲撃フェイズ後には上の写真のように満身創痍の歩兵ユニットのスタックが出来上がってしまった。ほとんどがDDという状態で、この地から脱出するためには移動フェイズに去らねばならないが、想定ではドイツ軍がイニシアチブを取っているところから先攻プレーヤーであり、続くフェイズはドイツ軍の移動/射撃フェイズだ。このドイツ軍の移動/射撃フェイズに射撃を受けたり、突撃フェイズで白兵戦を挑まれるようなことがあると、もはや消滅する可能性が高く、ターン最後の方にある自軍移動フェイズを迎えられないかもしれない。
と言うわけで盤外砲撃は以上のような感じである。
それでは盤上にいる砲兵ユニットならどういう風にするのだろうか?
つづく
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コメント
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もりつち様どうもです。本作は盤外の砲兵はダイスで火力を決めたりするのでやや不安定なイベントと言った感じです。盤上の砲兵は火力・射程は小さいですがコンスタントに威力を発揮できるのでシチュエーションによっては盤上の方が使い勝手がよいようです。ただし、本稿ではまだ触れていませんが、コンスタントなのはドイツ軍の話で、ソ連軍はやや使い勝手が違うので事項では盤上砲兵ソ連軍編を書くつもりです。
SL...ごめんなさいSLはデビューしたときにはASLが出ていたのであまりよくわかりませんが、これも取り上げようかなと画策中〈笑)です。でもこの辺は猛者がゴロゴロいるのでどーも筆が進みません。
投稿: ぐちーず | 2008/07/06 18:57
とても具体的でわかりやすい内容です。
戦術級ゲームにおける間接射撃といえば、面倒な手順を踏んで、しかもあまりアテにならない(SL等)という印象があるのですが、本作の場合どーなんでしょうか?
記事を読む限りはそれなりに使えそうですね。
投稿: もりつち | 2008/07/06 10:37