9月の戦い(2010年)
あっと言う間に月日は過ぎ、早くも9月。そろそろウォーゲームをしないとブログのネタが尽きる(そんなことはない)。
もちろんこういう休止期間は何をしているかというと、新しいゲームを色々探って来たる戦いに備えたりする。
関東圏からわざわざ遊びに来られるもりつち氏などとは「槍隊ゲーム」リストなどでプレイするゲームを取捨選択していると言う話しはつどつど出てきているが、こういう時こそリストのアップデートを図ったりする。
最近の流行というか注目はやはりノルマンディ'44でしょうか。疲れるけどやり甲斐のあるシモニッチ作品はプレイしたいゲームの候補でもあります。
とはいえ9月に入ってから仕事が立て続けに佳境を迎えており、そういうハードのゲームはもとよりそもそもゲームプレイまでこぎつけなかった。
ところがいつもならポッと空いた日曜日に誰とも調整付かないと言うのが多いが、なぜか今回は巧い具合にスケジュールが合いプレイにこぎつけた。
今回はメインゲームの他にサブとしてあるいは前からプレイしたいが第2候補以下なので中々プレイにこぎつけないゲームをまとめてプレイしようと画策した。
さらには近くに仙台牛タン専門店らしきものが開店し、開店セールで安価に牛タン定食が食べられるので早めにゲームプレイをしようかという話までまとまり、充実な一日を過ごす事ができた。
ちなみに牛タン屋さんはオイシイです。麦飯とテールスープのセットです。
フライング・タイガース(CMJ94)
遡る事4ヶ月前、エアフォースをプレイし終えた我々は空戦(航空戦)ゲームについて新たな感想をそれぞれに持った。
筆者はゲームにおいて割と兵器そのものの精密な描写というのには寛容で、例えばエア・フォースやエアスペリオティのような空戦のゲームは今でもアリだなあと思います。逆に一緒にプレイしたK氏などは負担に感じたみたいで、話をしてみると負担の原因はどうやら兵器そのものへの理解や想像力の補完ができていないからではないだろうかという事になった。
そういうスキル(知識とかの)は戦術級には往々にして必要かもしれないが、そこまでスキルが必要でないゲームもあるべきではないだろうか。例えば単機空戦を表すものではなく、部隊同士の航空作戦を扱ったり。
実は空戦ゲームは陸戦のように幅広くなく狭く個の精密化のバリエーションは果たしたものの未だ横の広がりがまだないのではないかと感じている。
空戦といえども精密さを売りにするような戦術級だけではなくアブストラクトな戦術級や陸戦のように作戦級、戦略級というのもあってもいいのではないか。
そこが希薄なジャンルであるが故に空戦=邪魔くさいとか空戦=時代遅れ的な不当なジャンル評価には繋がっていないだろうか。
最近でこそようやくダウン・イン・フレーム(GMT)のようにカードを使ったり、ダウンタウン(GMT)やChennault's First Fight(LPS)のように航空作戦そのものをテーマにしたりと広がりを見せている。
そう思っているとコマンド誌から2in1でフライング・タイガースが発売された。ビルマ(CBI)戦域での連合軍と日本軍の航空戦を扱う。ビルマ戦域の航空戦は大日本絵画のビルマ航空戦やその他の戦記物でも扱われる事が多い戦区です。陸軍航空隊が活躍したという事もありますが、他の戦区に比べて健闘した印象の良さがあるのかもしれません。
日本陸軍航空隊といえば零戦に代表される海軍航空隊の影に隠れて印象が薄いですが、ビルマ戦区ではかなり遅い時期まで勇戦した事からも注目の舞台でもあります。少なくとも戦前では(目にする事が多かったという事もありますが)陸軍航空の認知度は今よりも遥かに高いのでした。
それはやはり軍神とうたわれる加藤建夫率いる飛行第64戦隊と新鋭機「隼」の存在でしょうか。
その加藤隼戦闘隊が活躍した戦場です。
今回はマップの向いている方角がたまたまラングーン側がK氏の方であったという事からK氏が日本軍をとり、筆者が連合軍になりました。
簡単にゲームはどいうものかと書くと、手持ちの航空部隊を利用して制空権を奪い、持続的な制空権の確保の結果、地面が制圧され基地が推進される。勝敗はエリアの制空権を得点に換算しその差を競うというもの。
プレイ手順は主だったものだけ挙げると日本軍移動→連合軍移動→戦闘→制空権確認とう流れとなる。この手順はラングーンにあるレーダーが無力化されると日本軍爆撃機移動→連合軍移動→日本軍戦闘機移動→戦闘→制空権確認となる。レーダーの無効化とはラングーンのあるエリアを支配するあるいは基地を爆撃によって無力化するなどがある。エリアの支配のためには制空権を得、敵の基地を無力化しかつエリア内に自軍の戦闘機のみがエリアに存在すれば達成される。
戦闘はABC三段階あるスピードレベルごとに射撃し、ステップ数と同数のダイスを振り射撃力以下の目がヒットする。そのうちそのダイスが6の目だと敵を強制帰還させる事ができる。最終スピードのCレベルは爆撃機が属し、全ての射撃戦闘に生き残った爆撃機が爆撃できる。以上のようなラウンドを繰り返し、一方がいなくなるまで行われる。各スピードレベルの冒頭に撤退できるのでスピードレベルが優勢な側は敵に討たれることなく撤退できる。
果たして展開は冒頭よりラングーンに大挙してやってくる日本軍。ほぼ全力でやってくるが在地のRAF(英空軍)と駆けつけたAVG(アメリカ義勇軍)との間で大空戦となり、爆撃隊が生き残ったものの戦闘機部隊がほとんどが損耗するという事態が発生。スピードレベルの差がここまで利いてしまって日本軍沈黙。
いきなり戦闘機部隊の過半が撃墜・損傷してしまい爾後の戦略に齟齬をきたす日本軍。戦闘機がないと制空権がとれないのと爆撃機単独では優先的に射撃され、かつ損害が来すであろう事は想像に難くない。
あまりの大損害にうなだれるK氏。
「全力は拙いんじゃあないの?」
「やっぱそうやろか」
しかし飛行団全体の投入と引き替えで得たレーダー破壊は連合軍に脅威となってしまう。
序盤からの手順変更は戦闘機を失した日本軍にとって生き残った戦闘機を有効に活かす事によって挽回の余地はある。
日本軍が戦闘機が少なくなったとはいえ連合軍も同じく修理のために引き上げている機体があったりしてこの好機が活かせない。支配権の確保のために足の短い戦闘機をビルマ全土に派遣し制空権を得、溜飲を下げる。制空権はZOCのように敵の進攻を止められるので、陸軍重爆隊による遠距離爆撃を防ぎ、攻撃箇所を限定する事ができる。
「ラングーンかシャンか雲南しか行けへんやん。こっちは戦闘機もないし・・・」
逆に先制権があり強力なフライングタイガーズを擁するであろう雲南の地からは直接タイに踏み込めないようになっている。
戦いは一進一退。序盤のラングーンのみ攻撃に懲りた日本軍は戦力を分派し、各地で連合軍との戦いを演じた。制空権こそは取れないが連合軍戦力が消耗していった。
連合軍も飛行場の制限などで修理送りにできない戦闘機を撃破する目的で、タイのチェンマイに攻撃し爆撃と共に得点を稼いだ。
「き、きたない!」
「そう言うような奇襲があったからそれを再現しようと思って。」
しかし日本軍の増援スピードは早く、失われた機数を越える増援がやってきて更には修理から帰ってきた機体などもあわせて連合軍が押されるようになるのはそろそろ見えてきた。
連合軍と言えばRAFにハリケーンがやってくるぐらいで、序盤からの戦力はなるべく残しておきたい所。しかし積極作戦の裏には損耗があり、次第にジリ貧になってゆくのではの感が強くなってきた。
今回のトピックはチェンマイ攻撃が大失敗し、有力なRAFの機体が失われた事だろう。アメリカ海軍に嫌われて諸国に売り払われてフィンランド以外では評判が良くないバッファローですら有力な戦力だ。そのバッファロー主力のRAFが待ち伏せを喰い(比喩的表現です)撃滅された。
「ああ!!二匹目のドジョウはなかったか!」
話は逸れるがバッファローの後継機はワイルドキャットで、ワイルドキャットの後継がヘルキャット。アメリカの艦上戦闘機はなぜ同じシルエットを踏襲するのかと不思議だったが、これに答える回答は見た事がない。
日本軍は航空撃滅戦を指向してきた。連合軍の戦闘機を破砕するためあちこちに爆撃機を分派し、それに食らいついてきた連合軍戦闘機に数的優勢が得られるように戦闘機を差し遣わし、連合軍戦闘機を削いでゆくというやり方だ。
運良く戦闘機を撃退し爆撃できれば満点、相撃ちならまあよし。最悪でも大量の爆撃機を逆に空戦に使うと言うような数で圧倒方式に連合軍は被害が嵩む。
雲南に根拠を置くフライングタイガースはP40というスピードに優越した頑丈な戦闘機で、これこそがビルマ制圧には障害になると踏んだK氏は雲南に積極的に進攻し、フライングタイガー狩りに邁進した。
「仕事人狩りや~(注.必殺シリーズの真似)フライングタイガース狩りや~」
こちらとしては中国空軍の来援など欲しい所であるが残念ながらダイスチェックが成功せず雲南は日本軍機が飛び回った。
「中国の方々がやって来ない。」
日本軍は鍾馗やら屠龍やら筆者が羨むようなラインナップで、97式から2式まで揃うという垂涎の航空ショー状態。
遂に雲南に日本軍の制空権マーカーが置かれる事に!シャンに助攻で足止めし、雲南に大挙してやって来た日本軍にもはや為す術はない。制空され爆撃に無力化についには制空権が奪われた。
こちらはもはやAVGが消耗し、RAFも息絶え絶え。数部隊で日本軍の大部隊を防いでいるが向こうも得点を稼げてないので得点的には互角だ。
「中国の方々がやって来ない。」
中国空軍はダイスチェックで増援の有無を決定するが、毎ターン判定つまり判定に失敗すれば去ってしまうと言う短期アルバイトみたいな出方をするので長期的な戦略には組み込むのが難しい。しかもほぼ旧式機。二線級の戦闘機などが主力の当戦線ですら旧式だが、この際飛べれば何でも良いと感じるようになる。
最終ターン日本軍の勝利を阻むべく最後の足掻きを続ける。状勢から判断するにとっととビルマから去り空軍再建の方が先だと思うがゲームはまだ続いているので最後まで戦う。
問題は雲南。ここの制空権が取られると日本軍に2ポイントも取られるのでここは明け渡したくない。しかしAVGのP40は既に無く、当てにならない中国軍機では心許ない。RAFからハリケーンを分派し加勢させる。
ビルマはほとんどが席巻されたが日本軍はまさかの雲南での爆撃失敗で制空権が取れずなんとなんとの引き分け。
「危なかった~」
機体のレーティングは好き者から見たらツッコミどころはあろうが、さすがにミクロの世界のお話をどうこうするような規模のゲームでもなく、エリア取りのゲームとしてみると細やかながら差があり面白い。
空版ヴィクトリーアットシー的な戦略級ゲームで、ビルマという舞台だけでなく他にも使えそうな使えなさそうな微妙なバランスが面白いかも。
ユニットサンプルを見た時、最近流行の美麗な線画のアイコンかと想像していて実際はシルエットだったので、思わず2in1の片割れだから仕方がないかと思ったが、実は戦略級ゲームであるが故にワザとそういう風にしたのではと思うようになった。
というのもマップがビクトリーアットシーなどのようにベタ地ではなくて航空写真(グーグルアース)かと思うぐらいに視覚に訴える写実的な地紋で、これにユニットが懲りすぎると背景に埋没してしまうのであえてそう成されたのかもしれない。
そのマップ上でユニットを動かす時に目にはビルマの地が脳内には発動機の音がゴウゴウと鳴っていた。
プレイアブルな戦略級でニヤリとさせる演出を持つゲームは貴重で、このゲームもビルマ戦線という忘れ去られている戦線と同じく忘れ去られるのだろうか、それとも折々に記憶から呼び起こさせる事になるのだろうか。
航空戦戦略級という意欲作は貴重だ。細やかな航空機の諸元を知らずとも(もちろん知っておいた方が豊かなプレイができる)運用は可能だしゲームとしても楽しめる。
さらにはキャラクターが多いのも素晴らしい。残念なことに燻し銀過ぎるキャラクターが多いのが難点かもしれない。それを抜いても航空戦戦略級は数少なくジャンルの幅を広げてくれる貴重な存在だ。
それは別として日本陸軍ラブ・ビルマ戦線ラブな筆者にとって今号は興味深く楽しむ事ができた。次に新しいビルマ戦のゲームを見るのはいつの事だろうか。
« 8月の戦いその2(2010年) | トップページ | 9月の戦い(2010年)その2 »
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
takobaさま
ビルマ戦は感涙の余り涙で前が見えないカモです。とは言えプレイアブルなビルマ戦は本作が初めてですから是非とも挑戦いたしたく。猿遊会でやりますか(冗談)!
もりつちさま
そうなんですそれは僕も思いました。ソロモンだけとかニューギニアだけの視点では片手落ちかもしれないので両戦線を平行に扱うのがよいかもしれませんね。
投稿: ぐちーず | 2010/09/20 21:30
私もちろっとだけプレイしました。
案外面白いですね。
このシステムを応用してソロモンかニューギニア戦できないかな、と妄想してしまいました。
投稿: もりつち | 2010/09/20 18:29
ビルマ戦ラブなぐちーずさん、このゲームのもうひとつの片割れ、ビルマ電撃戦での日本軍の戦い方を是非、陸に上がったカッパ(いや、水中でも弱いけどさ)の私に教えてください。
投稿: takoba39714 | 2010/09/20 16:23