7月山科会(2013年)
そう言えば7月は忙しくて対人戦はほとんどできなかった。
Operation Anaconda(S&T276)
元々ウォーゲーム関連の雑誌を発行していたデシジョンゲームズは気がつけば有名なウォ-ゲーム付き雑誌ストラテジー&タクティクス誌(以下S&T誌)の他にテーマを絞ったウォーゲーム付き雑誌2誌が刊行されるようになっていた。WW2専門のワールドアットウォー誌(以下WaW誌)と現代未来戦専門のモダンウォー誌(以下MW誌)の2誌だ。
以前よりS&T誌だけでも結構な頻度で刊行しているところにWaW誌とMW誌が専門性の高いゲームが増えてきたこともあって嬉しい悲鳴を上げなければならなくなった。S&T誌の出版に於いては扱うテーマが広いと言っても人気のテーマとか考えるとそんなに雑誌数増やしたらS&T誌の刊行に影響が出るのではないの?など思ったり、逆に2大テーマが専門誌側に吸い取られてしまってもっとコア(歓喜)になってしまうんじゃあないの?と言う懸念があった。
ところがゲームの刊行スピードとか見ているとそんなことは懸念であったかのようだ。またWW2と近未来戦現代戦テーマもS&T誌でも取り扱ったりしているのでその多産ぶりに舌を巻くのみだ。中にはシステムの使い回しでと言うのもあるようだけれども何かゲームデザインや制作過程でのブレイクスルーでもあったんじゃあ無いかなと思ったり。
ゲームはMW誌側テーマでもある現代戦もの。S&T誌で出版された本作は、アフガニスタンでアルカイダ勢力との戦い、アナコンダ作戦を扱うゲームだ。
システムはコマンドチットを引いてチットに記載される部隊群が活性化し、増援、偵察、移動、戦闘を行う。
コマンドチットにはパニックマーカーとジハードマーカーというイベントチットがあり、パニックは条件ありでアフガニスタン軍がパニックを起こして部隊が損耗したり撤退したりするもので、ジハードは条件ありで元々ない増援がアルカイダにもたらされ、また全活性化というもので大規模な反撃が企図できるというものだ。
プレイでは筆者がアルカイダ側をプレイした。ビンラディンを使用できるが選択ルールなので今回は見送った。アルカイダ側はユニットを隠匿状態(裏返し)で配置し多国籍軍を待ち伏せする。
勝利条件は得点制。アルカイダユニットの中には民間人ユニットも混じっていて多国籍軍が除去してしまうとアルカイダ側に得点が与えられるものなどある。サドンデスにならないと得点で両者がそれぞれの勝利レベルを判定する。
ゲームの規模としては小隊規模だったりするので非常に戦術色が強いゲームだ。移動中に防御射撃をしたり射程があったり、高所では射程が延伸したりする。
序盤よりアルカイダ側の腹中に孤立する多国籍軍がありこれらを覆滅しようと考えたが防御射撃ががあたり、中々必要な兵力を得ることが出来なかったりした。
また増援としてやってくる多国籍軍を伏撃しようとしても防御射撃では相手にダメージを当てることができす、相手側の慎重な偵察活動で次々とアルカイダ側ユニットが明らかにされてしまった。
孤立している米軍を粉砕しようとするが兵力を集中しても効果が上がらず。
そのため兵力が暴露されてしまうので、その後の米軍の強烈な攻撃を食らって四散してしまう。
しかし相手を確実に撃破するためには相当量の兵力が必要でもどかしい。そういうのを繰り返すが、正面衝突すると多国籍軍には勝ち目がない。こちらにはサンクチュアリゾーンという番外ボックスがあってそこに逃げ込めば敵からの魔手からは逃れられるが盤上からユニットがなくなったらサドンデスなのであまり逃げ込みすぎるとえらい目に遭ってしまう。
米軍はマップ両端に基地があってマップ外からマップ、マップ外からマップ外という兵力の移動が出来るのでヘリなどを使ってピンポイントに兵力をバラまけたりする。なおその時にアルカイダ側に対空射撃できるユニットがあれば対空射撃でヘリなどを撃墜できる。
この辺多国籍軍プレーヤーは慎重に進めていたのでアルカイダユニットとは間合いを取りながら偵察は存分に火力は充分に投入してくるので撃ち漏らしがない。
イベントチットによってアフガニスタン軍のパニック、そしてジハードというチットが巡ってきてアルカイダ側にも陽の目を見るときが来たかと思われたが、射撃戦ではふるわずやっとこさCIAのユニットを殲滅できたぐらいだった。
その微々たる戦果を得るために大量の兵力が米軍のラッカサンズの前に晒されることとなってしまった。
支援火器旺盛な多国籍軍は航空支援という贅沢なアイテムで我らを悩ませてくれた。航空支援には航空機、ヘリ、UAVなどによるエアストライクという対地攻撃、UAV(無人偵察機)、衛星、AC-130による偵察がある。偵察はISRフェイズ(偵察)で行うが、
それ以外の対地攻撃はユニットに記載されている射撃力で攻撃する。これが意外に強力な火力のものがあるので侮れない。
なお、これらの航空機類や増援は増援プールに放り込まれていて増援フェイズにひっぱってくるが、その時に誤射マーカーが紛れ込んでいてそれを引き当てると任意の多国籍軍が誤射を受けるというものがある。それで多国籍軍に被害が出ればいいが残念ながら今回の多国籍軍はそんなにフレンドリーファイヤーが十八番ではないようで被害はほとんど出なかった。
このまま続けても多国籍軍のユニットが失われることはなさそうなのでアルカイダ側が勝利することはないのでこの辺でプレイを打ち切った。
なかなかアルカイダ側には厳しい状況だった。ファイヤーパワ-と言うこともあって火力を集めれば何とかなるはずだったが、各地の反撃で外しまくったりあるいはピン止まりだったりしたため戦果の拡張が難しかった。ゲーム終了までに数ユニットぐらいは撃破できようが、それでも敗北ラインの「手詰まり」を越えることはなく逆に多国籍軍判定では戦術的勝利は確定していてゲーム終了までにユニット一掃される勢いだった。
野心的なテーマ選びで簡単な戦術級ゲームであるので機会があれば選択ルールなどいれて再プレイしたいところ。
シンガポール陥落(CMJ77)
続けてコマンドマガジンのシンガポール陥落をプレイした。近年なぜかシンガポールをテーマとするゲームが多く出たこともあって、時流に乗ったものなのかわからないがコマンドマガジンでも出版された。
過去にエポックからマレー電撃戦というエポックのゲームにしては変化球な作戦級ゲームがあったけど、こちらはブダペスト45システムを使用した作戦級だ。ブタペスト45がスタンダードかどうか別にして最近流用が多い?作戦級システムと言うこともあって期待が持てる。
ブダペスト45システムと言えば戦闘力=戦力段階で、戦闘をすれば最低でも1段階ずつ消耗していく消耗型のシステム(ゲームによっては救済措置で必ず消耗しない場合がある)で、どれだけ戦力を維持しつつ押し進めていくか悩まされるゲームの一つだ。
さて、本作のシンガポール陥落と言えばシンガポールと言いつつその大半はマレー半島を攻略してゆく電撃戦を再現するゲームだ。日本軍は逐次加入していくが車輌化の進んだ3個師団でマレー半島を席巻する。ただし相手の英連邦軍は奇襲を受けたとは言え史実以上の抵抗は可能になっているのでワンサイド気味とは言えそれなりに楽しめるようになっている。
今回筆者は日本軍を担当しマレー半島を疾風怒濤に進んでゆく。和製電撃戦だ!!
第1ターンはマレー半島のタイ国境から進攻する部隊と海路上陸する部隊に分かれてスタートする。
海路上陸する部隊は適当に選べるのだが、ここはやはり史実通りに第18師団の侘美支隊に任せコタバルへ行くのが良いだろう。この強襲上陸はかなり厳しいものだったがマレー半島の背後から風穴を開ける攻撃は衝撃的であった。ゲームでも特別に強襲上陸のルールが設けてある。プレイでもそれなりに出血したが何とか押さえることに成功した。
そう言えばこの地での戦いを指揮した侘美少将は開戦劈頭の強襲上陸の指揮官だったけど終戦時には北朝鮮でロシア軍の上陸を迎え撃ったという上陸戦の両方を体験した珍しい指揮官の一人だったりする。
転じて主方面と言えるタイ・マレー国境では第5師団の面々がジットララインに取り付いて史実と同じく英印軍を撃破し、戦車を先頭に突進を開始した。ちょっと強引に攻めたので戦車部隊を筆頭に被害が出たが、後の戦いで楽になるのならあるいは進出する土地を稼げるのなら犠牲もまたやむを得ない。
ジットララインが抜けたところで英印軍が真面目なる抵抗を開始している。前方処置ってやつだろうか。しかし日本軍はそんな抵抗を粉砕するかのように先頭の聯隊が戦線を食い破り後続の聯隊が回り込み、次は後続の部隊が戦線に取り付いて撃退し、先の突破部隊がそれに続いて突進しというまるで絵に描いたような突進が再現された。
後続の部隊とのローテーションが英印軍の防衛を破綻させていた。ちょっとやそっとの部隊では抵抗にならないのだ。侘美支隊が進んでいるコタバルからの山地越えコースは英印軍の遅滞作戦で遅れが生じていたが、さすがに日本軍第5師団の進行が早いのでバランスを取って戦略的な後退を策した。侘美支隊後続の部隊は一部の有力の部隊を補給切れ覚悟で山地経由の第5師団方面への転進を図り、敵の背後に躍り出て補給線を寸断し一気に戦線を後退させることを企図した。
あっというまにスンゲイパタニを越え山側からの1個聯隊によって英連邦軍は防衛計画を余儀なくされた。分離転進してきた日本軍を撃滅できるチャンスだったが、事態はそういう目先のことを考えるべきではなかった。
イポ-、カンパル間の会戦に於いて英軍は第18師団の1個聯隊に反撃を図ったが、やはりパンチ不足でダメージは少なかった。そのためにその後に始まった日本軍の第5師団半部と増援で追及してきた近衛師団の先頭部隊が攻勢を開始し、爾後の防衛に難を来すまで戦力が低下し日本軍の突進をとどめるものはもはやクワラルンプールの部隊含め数個部隊しか無かった。コタバルからの山道で第18師団を押さえていたオーストラリア師団も半数撃破され、残部は包囲されそうに陥っていた。こうなるともはや英軍は抵抗の道を閉ざされクアラルンプールも捨てて後はシンガポールへの逃避行となりこの時点で英連邦軍が日本軍部隊を撃破できても日本軍の勝利ポイントまで積み上がらないことから英軍の敗北で終了した。
プレイしてマレー攻略戦のゲームに新風が吹き込まれたような気がする。マレー攻略戦は中々これだ!って言う決定版がないが既存のシステムを活かしなおかつプレイしやすいというのは貴重と思われる。
本ゲームでユニークなのは補給確認が1プレーヤーターンの中に2回あり、1回目は切れているかどうか、2回目は切れている部隊はやっぱり切れているかという確認になりやっぱり切れている場合は除去されるという厳しいもの。補給切れ覚悟で突破しても最後までに補給路を啓開できないと消滅するので厳しいところだ。逆にこれがあるために放胆すぎる行動が抑制されているとも言える。
マレー攻略戦などは日本陸軍ものの作戦級ゲームと言えば最も多いタイトルなのでご当地としてはやはり出版して欲しかったテーマの一つ。最近はあまり人気の無い日本陸軍テーマのゲームがポツポツと出てきてくれて嬉しい限りだ。
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