4月山科会(2015年)~TANKS
しばしの感想戦のあと、CMJ121号のガザラの戦いを片付けた。ゲームは3時ぐらいから始めていたのでおおよそ3時間ちょっとで終わったことになる。これがもしフルキャンペーンであれば倍に伸びるので単純計算では6時間から7時間には終わるんじゃあ無いだろうか。
リング・オブ・ファイヤ辺りから始まった週末の余暇に8時間程度までに終わる事を意識したゲームはキチンとプレイ時間など考えて作ってあるので1時間ぐらい経ってたったこれだけしか進まないって思わないようになっているのは凄いなあと思う。
山科会やる気びんびんの朝9時スタートみたいなことはあまりできず、だいたい土曜日日曜日の昼下がりからスタートして夜の9時ぐらいの終わるというパターンが多い。ということは6時間から7時間ぐらいがおおよその滞空時間であるのでそれで収まるゲームは貴重だ。
で、今回は3時間ちょっとで終わったのであと残り3時間ぐらいとなった。さて何をしようかと言うことになってゲームマーケット大阪に行って先行販売を買ったにもかかわらずプレイする機会を失っていたTANKSをプレイすることにした。
TANKS(国際通信社)
今回プレイしたTANKSは過去にエポックから出版のシミュレーションゲーム入門と言う箱入りゲームの中に入っていた1作を切り出して再版したものだ。
エポック社の出版したウォーゲーム群の凄いところは出版して数十年経とうかというのに未だに人気があるということだけど、もう一つ重要なのはウォーゲーム人口を拡大するに当たって安価にして質が高い作品が多かったていうことだろう。
今から見ると確かにレイティングが古くさいとか、ルールの書き方が甘いとか色々あるけど、そんなことを忘れさせてくれるほどエキサイティングなゲームが多かった。
現在、ウォーゲーム人口は増えつつあるという話をあちこちから聞かされる。マーケットの人口が増えているのとプレイ人口が増えているのとは必ず一致しないがそれでも嬉しい話だ。ベストなのは購買層がプレイ層へ移行していただくことが最も喜ばしい。
で、我々がウォーゲームをプレイした頃に立ち返って考えると恵まれた環境にあったと言えるかもしれない。卵が先か鶏が先かの議論になるかもしれないけどウォーゲームそのものの出版の維持てのも大事だし、ウォーゲームをプレイできる環境って言うのも大事。これら二つが両立して初めて活きていると言えるんで無いかな。
で、本作はコマンド:タクティカル・コンバットシリーズ(以下CTCS)の1作として国際通信社から発売された。CTCSとは要は安価で簡易なルールと豊富なシナリオ群に裏打ちされた戦術級ゲームのシリーズとのことで、F-16ファイティングファルコンから始まって本作で5号目、陸上戦術級では初の作品だ。
http://commandmagazine.jp/ctcs/05/index.html
中を見てみると東部戦線の戦車戦を再現できるようになっており、シャーマン映画「FURY」が上映していた事を考えると西部戦線の連合軍戦車が入っていないのは残念との声も聴かれたが、西部戦線を入れるとアフリカ戦線とか戦争前半の戦車など多岐にわたってヴォリュームが増えてしまうので後々のシリーズ化を考えるとズバッと切り取った方がメリットが大きい。
ゲームの方は戦術級と言うこともあって基本ルール7ページ、発展ルール3ページと恐ろしいぐらいに少量のルールで構成される。おおよそ他の戦術級に触れたことがあるのであれば、1度聴けばあらかたプレイできる代物だ。全くの初めての場合はフェイズの割り方がなぜ?とか独特のフォーマットに躓くかもしれない。
ターンのシーケンスは準備射撃→移動→前進射撃を先攻、後攻で繰り返す。準備射撃は移動の機会を放棄して精密の射撃を欲する場合、前進射撃は優位な位置を占めてから射撃したい時に選択する射撃でそれぞれにメリットデメリットがある。移動中においては相手プレーヤーが行使できる防御射撃があり、移動中において任意の地点で発動し撃破できる可能性があるが、射撃後の成否にかかわらず爾後の射撃機会を喪失するのでその適用は慣れとセンスであろう。
さてゲームは初めてと言うこともあってシナリオ1をプレイした。ドイツ軍の3号戦車、4号戦車に大挙としてソ連軍のT34やKV1が襲いかかるものでカウンターの数だけを見ればソ連軍が圧倒的にも見える。シナリオでは3号戦車2両、4号戦車2両、計4両に対し、ソ連軍はT34が5両、KV1が2両、SU76が3両と倍以上の車両数となる。
ところが表面的な戦力比には必ずしも現れてこない有利な点がドイツ軍にはあった。
それは射撃戦の優位であろう。射撃は準備射撃か前進射撃か、防御射撃かによって制限が変わるが、基本ユニット射撃表を参照して射撃する車輌の距離から命中に要するダイスの目、貫通力を求め、求められたダイスの目以下を出せば「命中」の判定を得られ、撃破判定表で求められた貫通力と目標車輌の装甲値との差を表に当てはめ、ダイスを振り最終的な目標車輌の状態を求めるという構成になっている。
ここでソ連軍のT34/76装甲値はというと「4」でドイツ軍の4号戦車で10ヘックス先から射撃するとすると貫通力は5、命中に要するダイス目は2ダイスで7以下、仮に命中したとすると貫通力と装甲値の差は1となるので2ダイス2から6以下だと撃破出来ることになる。
逆のパターンだとドイツ軍の4号戦車は装甲値「4」ソ連軍のT34/76で同じ条件で射撃するとなると貫通力は4命中に要するダイスの目は3以下。仮に命中したとすると2~5以下だと撃破できることになる。ドイツ軍のそれと似たようなものだけれども当てるまでが大変だと言うことに気が付くだろう。ソ連軍が4号戦車と同じぐらいの命中を得ようとすれば4ヘックスまで近づかねばならなく、自然として戦い方としてはドイツ軍は遠戦志向、ソ連軍は近戦志向となる。
シナリオの要求するところは敵の半数を打倒すると言うことになる。先ほど比較した戦車の他にはドイツ軍には1ランク旧式の3号戦車が2両(全戦力の50%)、ソ連軍には自走砲のSU76が3両(全戦力の30%)がありこれらが付け狙われないようにしつつ撃破スコアを稼がねばならない。
想定されるドイツ軍の戦い方は遠戦志向と言うこともあって盤端に近いところから前進してくるソ連軍車輌を各個撃破すると言うことだろう。
こちらとしては出来るだけ地形を利用しつつ肉薄し、至近距離より必殺のパンチを浴びせることを想定した。
敵軍は戦力が少なく1両でも撃破されれば守りに入るのでは無いか。
ベストなのは敵に先んじて撃破し、対応にアタフタしている間に勝利をもぎ取ることだろう。
プレイは固めのKV1-Cを最左翼に中央から右翼までは最大の車両数を誇るT34/76が占め、その後方にSU76を置くこととした。
対するドイツ軍は先んじて撃っておきたいのかソ連軍が遠距離では当たらないことを見て4号戦車を右翼(ソ連軍からは左翼)、3号戦車を左翼に配している。中々大胆な配置だ。
ソ連軍の不利な点はプレーンな射撃表の不利であるだけで無く、前進射撃では命中判定に+3のダイスの目修正が付く。対するドイツ軍は+2だが、序盤に触れたとおり4号戦車は10ヘックス先で前進射撃をしてもソ連軍の準備射撃を優越する当たり目が得られる。
4号戦車の射線から逃れ、3号戦車からは有効だが与えられない距離を保ちつつKV1戦車はジリジリと接近する。重戦車ゆえ移動力が低く他の戦車も歩調を合わせなければならないのがもどかしい。
ドイツ軍は遠距離から撃ってきたが、撃ち尽くしてしまうとザッと間合いを詰められてしまうので防御射撃の余地を残しつつ撃破の機会を窺っている。
こちらの計算では4号戦車に対して遠距離ではラッキーヒット1台、近接するまでに1台、近接してから1台撃破されるという見込みを立て、T34を囮に見立てて前進した。もっとも4号戦車がこちらの意図するKV1やT34に相対している間に残りのT34で痛打を浴びせるというのがこちらの芯なる意図だった。
統制前進する我がソ連軍、かなり遠目からでも撃ってくるドイツ軍。射線が通ればSU76も目標にされてしまうのでここは自走砲は森陰に待避。
KV1組は3号にも撃たれず4号は射線が通らず近接に成功している。ヤバいと感じた4号戦車は同じ森の塊に潜めて接近するT34を撃ちすくめる。
6ヘックスに近づくと命中弾が頻発するようになった。最も暴露して前進する1両はキャタピラを切られ、移動不能となり続くターンの射撃でついに撃破されてしまった。ここまで2両を覚悟していたが幸いこれが初めての被害だった。
森際から進む1両は相手の射線をくぐり抜けて4から5ヘックスの地点まで到達した。こちらへの防御射撃は被害とならずこちらの射撃でついに4号戦車を撃破した。
さらに3号戦車に突進するT34の1隊も3号戦車の防御射撃をくぐり抜けて射撃を開始し、見事仕留めて凱歌をあげるに至った。
意図通りとはならなかったけど数的優勢を活かせて潜り込めたのはよかった。ゲームマーケットの試遊で遠距離から屠られているT34の絵を見ているのでギリの戦いになるかと思われたが遠距離の持ち味を活かされること無かった。
T34/76は先進的な設計で出現当初はドイツ軍にショックを与え、パンターなど開発中の戦車の形状にも影響を残すほどの優れた戦車だったが、ゲーム上ではソコまでのショックを受けることはない。しかしその快速性と登城する車両数の多さは本シナリオでも余すところなく真価を発揮した。
プレイするとあまりのシステムのシンプルさにあっけにとられるが、簡単な戦術級は今や潮流と行ってもいいので大いに歓迎される作品ではある。
ネット上の反応でもM4シャーマンが...との声も聴かれるが、幸いコマンド編集部からはモジュールやシナリオなどの検討がされているとの噂であるので西部戦線やアフリカ戦線がでてくることを待とうと思う。
戦車に興味を持ち始めたウォーゲーム初心者だけで無く、手慣れたウォーゲーマーもちょっとした隙間にプレイできるのでそういうときに是非とも活用したいと考えている。
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